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異邦人の庭 〜secret garden〜
第11章 ミスオブ沙棗の涙 〜甘く苦い恋の記憶〜
船を降りてからは、ペリーロードをのんびりと散策した。
平滑川沿いの小径には青々とした柳が揺れる。
歴史ある下田の古い町並みは、まるで過去の時代にタイムスリップしたかのようだ。
幕末の建物や大正モダンな洋館が立ち並ぶ美しく叙情的な風景に思わず見惚れる。
「…わあ…!綺麗…!」
下田名物の伊豆石やなまこ壁が使われた家並や商家を興味深く見ながら、藤木の手を繋ぎ歩く。
…少しだけ年が離れたごく普通の恋人同士のように…。
「…レトロモダンで、すてきだわ…」
紫織はうっとりとため息を吐いた。
「うん。いいね…。
情緒があって、ノスタルジックで…。
歴史ある町ならではの風景だ…」
…そして…
「…紫織と一緒だから、尚更綺麗に見える…」
耳元で優しく囁かれた。
「…もう…。先生ったら…」
紫織は白い頰を染めながら、繋いでいる手をぎゅっと強く握りしめた。
…やがて二人は小径の突き当たりにある了仙寺に着いた。
ここは幕末にペリーらと日本政府により日米和親条約が締結された歴史的にも有名な寺だ。
真冬ということもあり、観光客は疎らであった。
静寂の中、ゆっくりと広い境内を見学する。
何百株もある草木が鬱蒼と茂っているのが眼を惹く。
「この庭のアメリカジャスミンはそれは見事だそうだ。
ジャスミンの寺とも呼ばれているらしいよ。
きっと辺りは素晴らしい薫りなんだろうな…。
今度は花の盛りの春に来ようね」
「ええ。きっとよ」
紫織は白くほっそりとした小指を差し出した。
「指切りげんまん」
藤木が穏やかに笑って、指を絡めてくれた。
「約束だ」
…今度、必ず…。
それはきっと叶えられる約束だと、信じていたのだ…。
平滑川沿いの小径には青々とした柳が揺れる。
歴史ある下田の古い町並みは、まるで過去の時代にタイムスリップしたかのようだ。
幕末の建物や大正モダンな洋館が立ち並ぶ美しく叙情的な風景に思わず見惚れる。
「…わあ…!綺麗…!」
下田名物の伊豆石やなまこ壁が使われた家並や商家を興味深く見ながら、藤木の手を繋ぎ歩く。
…少しだけ年が離れたごく普通の恋人同士のように…。
「…レトロモダンで、すてきだわ…」
紫織はうっとりとため息を吐いた。
「うん。いいね…。
情緒があって、ノスタルジックで…。
歴史ある町ならではの風景だ…」
…そして…
「…紫織と一緒だから、尚更綺麗に見える…」
耳元で優しく囁かれた。
「…もう…。先生ったら…」
紫織は白い頰を染めながら、繋いでいる手をぎゅっと強く握りしめた。
…やがて二人は小径の突き当たりにある了仙寺に着いた。
ここは幕末にペリーらと日本政府により日米和親条約が締結された歴史的にも有名な寺だ。
真冬ということもあり、観光客は疎らであった。
静寂の中、ゆっくりと広い境内を見学する。
何百株もある草木が鬱蒼と茂っているのが眼を惹く。
「この庭のアメリカジャスミンはそれは見事だそうだ。
ジャスミンの寺とも呼ばれているらしいよ。
きっと辺りは素晴らしい薫りなんだろうな…。
今度は花の盛りの春に来ようね」
「ええ。きっとよ」
紫織は白くほっそりとした小指を差し出した。
「指切りげんまん」
藤木が穏やかに笑って、指を絡めてくれた。
「約束だ」
…今度、必ず…。
それはきっと叶えられる約束だと、信じていたのだ…。