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異邦人の庭 〜secret garden〜
第11章 ミスオブ沙棗の涙 〜甘く苦い恋の記憶〜
「藤木がこんなに綺麗なお嬢さんと俺のペンションに泊まりに来てくれて嬉しいよ。
…高校教師と生徒…禁断の関係か…。
ちょっと前にそんなドラマなかったか?
真田広之と桜井幸子のやつ…。
俺も美しいお嬢さんとそんなロマンチックな恋をしてみたいなあ…」
際どい言葉も、おおらかな自信に満ちた男がにこにこ呟くと、全く嫌な感じはせず、どこかユーモラスで紫織はつい吹き出した。
「おい。堂島…」
苦笑する藤木は、そんな彼の言動は慣れた風であった。
「わかったわかった」
堂島は手を挙げた。
「…今日は君たち二人きりの貸切だ。
ゆっくりロマンチックなイブを過ごしてくれ。
…せっかくだからシャンパンの差し入れを…と思ったんだけど、紫織さんが飲めないものな。
だからここのパティシエ自慢の林檎酒とクリスマスケーキをプレゼントさせてくれ」
「すまないな。気を遣わせて…」
「何を言っているんだ。水臭い…」
…そう言えば…と、堂島がやや声のトーンを落として尋ねた。
「お袋さんは大丈夫か?
うちの母親が心配していたぞ。最近、句会にいらっしゃらないんだけれど…て」

藤木の端正な眉に微かに翳りが過ぎり…だがそれはすぐに穏やかな表情に切り替わった。
「…大丈夫だよ。少し体調を崩して外出を控えていたらしい。
ご心配をありがとうとお母様に伝えてくれ」

その返答を聞き、堂島がほっとしたように笑った。
「それは良かった。
…お袋さんもあのワンマンな義兄さんに気を遣ってストレスが溜まってしまったのかもな…。
お前も大変だよなあ…、あの義兄さんじゃあなあ…。
おっと、せっかく二人の貴重な愛の時間なのに邪魔してごめん。
…では紫織さん。
ごゆっくりディナーを楽しんでくださいね」

堂島はにこやかな微笑みでそう締めくくると、優雅に一礼してその場を後にした。



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