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異邦人の庭 〜secret garden〜
第11章 ミスオブ沙棗の涙 〜甘く苦い恋の記憶〜
「…すごく綺麗な香水瓶…!」
「資生堂のミスオブ沙棗という香水だ」
キャンドルの灯りに透かしてみる。
…異国の美しい硝子美術品のような…ランタンのような…どこかお伽話めいた色彩とフォルムの香水瓶だ。
「…資生堂?」
意外な気がした。
紫織くらいの年齢だと資生堂は口紅やファンデーションなどメイクアップ用品の印象が強いからだ。
…そうして藤木は穏やかに…けれど熱を込めて語り始めた。
「そう。資生堂はこれまでたくさんの優れた香水をたくさん作り上げている。
バブル期には名調香師・セルジュ・ルタンスを招致し、彼がプロデュースした海外ブランドにも負けない素晴らしい香水をいくつも世に送り出してきた。
けれど実は資生堂の真骨頂は、日本独自の香水なんだ。
資生堂は日本の四季や日本人の肌質に合った香水を作るのが本当に上手い。
…禅、舞、琴、むらさき、そして高級香水すずろ。
今から数十年も前から、まだまだ乏しい香料を駆使して欧米に全く引けを取らない純日本の名香を輩出してきた。
…そしてこのミスオブ沙棗。
元々は沙棗という香水の姉妹ブランドのようなコンセプトで出されたものなんだ。
…沙棗は中国の古い伝説、沙棗花からきている。
昔、香妃という美しいお妃様がいた。
彼女のその玉のような肌からはいつも麗しい沙棗花の薫りがして、多くの人々を虜にしたと言われている。
このミスオブ沙棗はその美貌の香妃の若き日のイメージなんだ。
きらきらと煌めくように美しく若さが弾け、その魅力に国中が恋をする…。
…そして、その甘く…どこか淫らで官能的で神秘的な花の薫りはすべての男たちをひれ伏させる…。
ミスオブ沙棗は、そんな香水なんだ」
「資生堂のミスオブ沙棗という香水だ」
キャンドルの灯りに透かしてみる。
…異国の美しい硝子美術品のような…ランタンのような…どこかお伽話めいた色彩とフォルムの香水瓶だ。
「…資生堂?」
意外な気がした。
紫織くらいの年齢だと資生堂は口紅やファンデーションなどメイクアップ用品の印象が強いからだ。
…そうして藤木は穏やかに…けれど熱を込めて語り始めた。
「そう。資生堂はこれまでたくさんの優れた香水をたくさん作り上げている。
バブル期には名調香師・セルジュ・ルタンスを招致し、彼がプロデュースした海外ブランドにも負けない素晴らしい香水をいくつも世に送り出してきた。
けれど実は資生堂の真骨頂は、日本独自の香水なんだ。
資生堂は日本の四季や日本人の肌質に合った香水を作るのが本当に上手い。
…禅、舞、琴、むらさき、そして高級香水すずろ。
今から数十年も前から、まだまだ乏しい香料を駆使して欧米に全く引けを取らない純日本の名香を輩出してきた。
…そしてこのミスオブ沙棗。
元々は沙棗という香水の姉妹ブランドのようなコンセプトで出されたものなんだ。
…沙棗は中国の古い伝説、沙棗花からきている。
昔、香妃という美しいお妃様がいた。
彼女のその玉のような肌からはいつも麗しい沙棗花の薫りがして、多くの人々を虜にしたと言われている。
このミスオブ沙棗はその美貌の香妃の若き日のイメージなんだ。
きらきらと煌めくように美しく若さが弾け、その魅力に国中が恋をする…。
…そして、その甘く…どこか淫らで官能的で神秘的な花の薫りはすべての男たちをひれ伏させる…。
ミスオブ沙棗は、そんな香水なんだ」