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異邦人の庭 〜secret garden〜
第11章 ミスオブ沙棗の涙 〜甘く苦い恋の記憶〜
「…そうなのね…。
そんなすごい香水なのね…」
紫織は感心して、その蓋を開ける。
ほんの少しだけ、手首の内側に付けてみる。

「…ああ…なんていい薫り…!」
紫織はうっとりと眼を閉じた。

…甘い甘い蜜のような…けれど僅かに苦味と酸味のある上等な梅の花のような薫りが広がる。
…お香のような…シプレーのような…フローラルと簡単には表現できないフローラルとオリエンタルが混じり合ったフロリエンタルな薫り…。
…そして何より胸が甘く切なく疼くようなどこか背徳的な妖艶な……けれど儚げな風情の薫りだった。

「僕はミスオブ沙棗は資生堂の香水の最高傑作だと思っている。
…正直、香水は似たような薫りと言うのは結構あるけれど、ミスオブ沙棗は違う。
唯一無二の香水なんだ。
同じ薫りを探しても決して見つからない。
和製ディオールのプアゾンと評する人がいるが僕は違うと思う。
ミスオブ沙棗はプアゾンにはない品位と…それからひんやりとした官能性と捉えどころのない神秘性がある。
これは世界的にもレベルの高い最高峰の薫りなんだ。
…そして、僕が一番愛している薫りなんだよ…」
…熱い言葉と同じくらい熱い眼差し…。
美しい榛色の眼差しが紫織を見つめていた。

「…先生…」
「こんな薫りを作りたいと、コロンビアで研究を重ねたけれど、やはりどうしてもできなかった…。
薫りの世界というのは一朝一夕ではいかないんだ。
…最近の資生堂はどんどん香水分野から撤退している。
研究にかかる費用や労力は莫大なものだからね。
良心的な値段では採算が取れないんだろう。
廃盤になる香水は後を絶たない。
…おそらくこのミスオブ沙棗と沙棗も、同じ運命を辿るだろう…。美しく芳しく…そして儚い…それが薫りなんだ…」

…寂しげな藤木の微笑みが、紫織の胸を痛ませた。

藤木は紫織の白い手を取り、ミスオブ沙棗の薫りを確かめるように貌を近づけた。
…そうして、そっとその甲にくちづけ、告げたのだ。

「…だから僕はこの香水を紫織に贈りたかったんだ…。
僕が誰よりも愛する君に…」
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