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異邦人の庭 〜secret garden〜
第11章 ミスオブ沙棗の涙 〜甘く苦い恋の記憶〜
「離して!お母様!離して!」
タクシーに押し込められ、紫織は激しく暴れた。
蒔子は、細い身体のどこにそんな力があるのかと思うほどの強さで紫織を羽交い締めにした。
蒔子の着物に薫きしめられた沈香がぞっとするほど絡みついてくる。

「大人しくなさい。
貴女を助けてあげたというのに、何を暴れているのですか。
…経堂一丁目までお願いします。急いでください」
鋭い有無を言わさぬ声でタクシーの運転手に命ずる。
「帰らないわ!
助けて…て、何を仰っているの?」

紫織の手の甲に蒔子が爪を立てる。
「貴女は、学院の破廉恥な教師に乱暴されたのでしょう?」
「…何…?」
紫織は眉を顰めた。
言っている意味が分からない。
蒔子は…何を言っているのだろうか。

蒔子が貌を歪め、吐き捨てるように告げた。
「藤木芳人。化学の教師。
貴女を誘惑して、乱暴して、それを楯に貴女を脅して関係を続けさせているのでしょう?
それで合鍵を持たされて呼び出されて…お正月からまた弄ばれるところだったのよ。
お母様がいなかったら、貴女はずっとあの悪魔の生け贄になっていたの。
可哀想に…。
でも、もう大丈夫。
お母様が助け出してあげましたからね…紫織さん…」
蒔子の白い貌が無機質に笑った。

紫織は驚きと恐怖で金縛りにあったかのように身体を硬直させた。
…ようやく絞り出せた言葉が、震える口唇から漏れた。

「…お母様…何を仰っているの…?
私と藤木先生は愛し合っているのよ。恋人同士なの。
出鱈目を言わないで…!」
その口唇を蒔子の冷たく白い手が強く塞いだ。

「お黙りなさい。何が愛ですか。穢らわしい!
貴女は騙されたのよ。
獣のような男に陵辱されて、盲目になってしまったの。
そんなものは愛でも恋でもないわ。
黙ってお母様の言うことをお聞きなさい」

蒔子の瞳が冷たく禍々しい光を放って紫織を睨みつける。
…それは、殺意すら感じる憎悪に満ちた眼差しだ。
決して紫織を心配し、不憫に思っている瞳ではない。

…狂っている…お母様は…狂っているわ…。

蒔子の無気味さに、言い知れぬ嫌な予感が胸を過った。
そうして紫織は、その正体の分からぬ恐怖と闘い続けるのだった。

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