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異邦人の庭 〜secret garden〜
第11章 ミスオブ沙棗の涙 〜甘く苦い恋の記憶〜
「…ミス・キタガワ…。
それでは、貴女と藤木先生との間には…その…合意があったということなのですね?」
…生徒が教師と恋愛関係に陥っていることも恥ずべきことではあるが、刑事事件に発展するような強姦紛いなことがあり、関係を強要された…ということよりはまだ外聞は悪くないと、シスター・テレーズは判断したのだ。
「ええ、もちろんそうです。
私と藤木先生は愛し合っております。
結婚の約束もしているのです」
院長の後ろに控えているシスターたちから一斉に騒めきが起こった。
「何が結婚ですか!」
いきなり金切り声が上がった。
蒔子がテーブルを癇性に叩き、紫織を睨め付けた。
「穢らわしい!何も知らない無知な子どものくせに!
下らない男に身体を奪われて、すっかり洗脳されて、言うなりですか⁈なんて嫌らしい!」
シスターたちは固唾を飲んだ。
…北川紫織の母親と言えば、常に上品で淑やかで、決して人前で激したりしない物静かな人物であった。
確か、華道の教師をしていると生徒調査票には記入されていた。
京都の旧家出身だと、風の便りでも聞いていた。
今日のように、いつも上質な和服姿で教師たちにも折り目正しく、礼儀正しく…。
それが、今はまるで別人に豹変したかのようだ。
ぞっとするような憎悪の感情を、なぜか娘の紫織に向けているのだ。
堪りかねた亮介が蒔子を押し留めた。
「よしなさい。蒔子。そんな風に紫織を責めてどうする。
悪いのはその教師だろう。
紫織は…無理やり誘惑されたのだろう」
紫織は激しく首を振る。
「違う…違うわ!お父様!そうじゃないの。
先生は悪くないの!
私が先生を好きになったの!
先生は一線を引こうとしたの。本当よ」
娘を溺愛している亮介は一瞬辛そうな表情をした。
そうして紫織の髪を撫で、幼子に言い聞かせるように語り始めた。
「…紫織…。
お父様はお前が乱暴されたとは思ってはいない。
…お前がそう言うならば…きっとお前とその教師の間には恋愛感情があり、お互い恋をしたのだろう。
お前がその教師を庇いたい気持ちも分かる」
…けれどな…。
亮介の貌つきが厳しく引き締まった。
「教師が生徒に手を出すなど、言語道断だ。
お父様はそれを許すことは出来ない」
…しかも、あの男は…
言いかけたその時…
院長室の扉が慌ただしく開かれた。
それでは、貴女と藤木先生との間には…その…合意があったということなのですね?」
…生徒が教師と恋愛関係に陥っていることも恥ずべきことではあるが、刑事事件に発展するような強姦紛いなことがあり、関係を強要された…ということよりはまだ外聞は悪くないと、シスター・テレーズは判断したのだ。
「ええ、もちろんそうです。
私と藤木先生は愛し合っております。
結婚の約束もしているのです」
院長の後ろに控えているシスターたちから一斉に騒めきが起こった。
「何が結婚ですか!」
いきなり金切り声が上がった。
蒔子がテーブルを癇性に叩き、紫織を睨め付けた。
「穢らわしい!何も知らない無知な子どものくせに!
下らない男に身体を奪われて、すっかり洗脳されて、言うなりですか⁈なんて嫌らしい!」
シスターたちは固唾を飲んだ。
…北川紫織の母親と言えば、常に上品で淑やかで、決して人前で激したりしない物静かな人物であった。
確か、華道の教師をしていると生徒調査票には記入されていた。
京都の旧家出身だと、風の便りでも聞いていた。
今日のように、いつも上質な和服姿で教師たちにも折り目正しく、礼儀正しく…。
それが、今はまるで別人に豹変したかのようだ。
ぞっとするような憎悪の感情を、なぜか娘の紫織に向けているのだ。
堪りかねた亮介が蒔子を押し留めた。
「よしなさい。蒔子。そんな風に紫織を責めてどうする。
悪いのはその教師だろう。
紫織は…無理やり誘惑されたのだろう」
紫織は激しく首を振る。
「違う…違うわ!お父様!そうじゃないの。
先生は悪くないの!
私が先生を好きになったの!
先生は一線を引こうとしたの。本当よ」
娘を溺愛している亮介は一瞬辛そうな表情をした。
そうして紫織の髪を撫で、幼子に言い聞かせるように語り始めた。
「…紫織…。
お父様はお前が乱暴されたとは思ってはいない。
…お前がそう言うならば…きっとお前とその教師の間には恋愛感情があり、お互い恋をしたのだろう。
お前がその教師を庇いたい気持ちも分かる」
…けれどな…。
亮介の貌つきが厳しく引き締まった。
「教師が生徒に手を出すなど、言語道断だ。
お父様はそれを許すことは出来ない」
…しかも、あの男は…
言いかけたその時…
院長室の扉が慌ただしく開かれた。