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異邦人の庭 〜secret garden〜
第11章 ミスオブ沙棗の涙 〜甘く苦い恋の記憶〜
重苦しい静寂の中で、紫織が叫んだ。
「シスター・テレーズ!
藤木先生を辞めさせないでください!
先生は何も悪くないのです!
先生を辞めさせるなら…私も辞めます!」
「紫織!」
亮介が声をかける。
「落ち着きなさい、紫織」
「皆んな汚いわ!
藤木先生ひとりに罪を被せて何もかもなかったことにするつもり⁈
私の傷って何⁈
先生を愛したことが傷⁈
処女でなくなったことが傷ですか⁈
セックスしたことが罪ですか⁈」
シスターたちが一斉に騒めいた。
シスター・テレーズが眉を寄せ、一喝した。
「ミス・キタガワ!なんと破廉恥な言葉を!」
「私のセックスは愛です!
私と先生は愛し合ったのです!
少しも破廉恥ではありません。
罪でもありません。
私は傷ついておりません!
穢れてもおりません!
先生を罰するなら、私も罰してください!」
紫織の白い頰に水晶のような透明な涙が伝う。
亮介が苦しげに頭を振り、カヨに命じる。
「カヨさん。紫織は混乱している。
家に連れ帰ってくれ」
「…かしこまりました。旦那様。
さあ、紫織さん。まいりましょう」
カヨに優しく肩を抱かれ、紫織は激しく抗った。
「嫌!嫌よ!
このまま先生を悪者にして終わらせる気なんでしょう⁈
私と先生は愛し合っていたのに…!
愛し合っていたのに…!」
泣き叫ぶ紫織を、カヨと弁護士が抱きかかえるようにして院長室から連れ出す。
…紫織の悲鳴のような泣き声が、いつまでも廊下から消え去ることはなかった。
蒔子は冷ややかな一瞥を廊下に向け、やがていつもと変わらぬ淑やかな表情と所作でシスター・テレーズに一礼をした。
「シスター・テレーズ。
お騒がせをいたしました。
このことは、私たちも今後不問にいたしますわ。
どうぞご安心を」
そのまま立ち去ろうとする蒔子に、シスター・テレーズが淡々と…けれど鋭く言葉を投げかけた。
「…マダム・キタガワ…。
貴女のミス・キタガワへの愛は、一体どこにあるのでしょうね…。
…私は、ミス・キタガワの藤木先生への愛が真っ当に思えてなりません…。
…聖職者に、有るまじき考えかもしれませんが…」
蒔子はほんの一瞬だけ立ち止まり…けれど直ぐに歩を進め、静かに部屋を去ったのだった。
「シスター・テレーズ!
藤木先生を辞めさせないでください!
先生は何も悪くないのです!
先生を辞めさせるなら…私も辞めます!」
「紫織!」
亮介が声をかける。
「落ち着きなさい、紫織」
「皆んな汚いわ!
藤木先生ひとりに罪を被せて何もかもなかったことにするつもり⁈
私の傷って何⁈
先生を愛したことが傷⁈
処女でなくなったことが傷ですか⁈
セックスしたことが罪ですか⁈」
シスターたちが一斉に騒めいた。
シスター・テレーズが眉を寄せ、一喝した。
「ミス・キタガワ!なんと破廉恥な言葉を!」
「私のセックスは愛です!
私と先生は愛し合ったのです!
少しも破廉恥ではありません。
罪でもありません。
私は傷ついておりません!
穢れてもおりません!
先生を罰するなら、私も罰してください!」
紫織の白い頰に水晶のような透明な涙が伝う。
亮介が苦しげに頭を振り、カヨに命じる。
「カヨさん。紫織は混乱している。
家に連れ帰ってくれ」
「…かしこまりました。旦那様。
さあ、紫織さん。まいりましょう」
カヨに優しく肩を抱かれ、紫織は激しく抗った。
「嫌!嫌よ!
このまま先生を悪者にして終わらせる気なんでしょう⁈
私と先生は愛し合っていたのに…!
愛し合っていたのに…!」
泣き叫ぶ紫織を、カヨと弁護士が抱きかかえるようにして院長室から連れ出す。
…紫織の悲鳴のような泣き声が、いつまでも廊下から消え去ることはなかった。
蒔子は冷ややかな一瞥を廊下に向け、やがていつもと変わらぬ淑やかな表情と所作でシスター・テレーズに一礼をした。
「シスター・テレーズ。
お騒がせをいたしました。
このことは、私たちも今後不問にいたしますわ。
どうぞご安心を」
そのまま立ち去ろうとする蒔子に、シスター・テレーズが淡々と…けれど鋭く言葉を投げかけた。
「…マダム・キタガワ…。
貴女のミス・キタガワへの愛は、一体どこにあるのでしょうね…。
…私は、ミス・キタガワの藤木先生への愛が真っ当に思えてなりません…。
…聖職者に、有るまじき考えかもしれませんが…」
蒔子はほんの一瞬だけ立ち止まり…けれど直ぐに歩を進め、静かに部屋を去ったのだった。