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異邦人の庭 〜secret garden〜
第3章 コンテ・ド・シャンボールの想い人
…ミサでの千晴は、眼が覚めるように美しく、神々しくさえあった。
…ラテン語による福音朗読は、千晴の低音の…けれど絹のようになめらかな朗々とした美声が天井の高いカテドラルの空間に響き渡り、女学生たちは聖書から眼を離し、ある者は千晴の美貌に釘付けになり、ある者はその美しい声に心を預けるかのように、うっとりと見入るのだった。
「…高遠先生、本当にかっこいい…!
ラテン語だから何言ってるのかチンプンカンプンだけど、かっこいい!」
興奮したように囁いた菜月を、年嵩の厳格なシスターが睨みつけ諌める。
「ミス・サカイ、おしゃべりいけません」
「Sorry、シスター・ドロテア」
菜月は少しも堪えた風もなくけろりと詫びる。
その天真爛漫さが羨ましくさえ思える紗耶だった。
…確かに…
そっと、千晴を盗み見る。
…千晴お兄ちゃまは、相変わらず素敵だ…。
千晴は紗耶の母、紫織を愛していると知りながらも…それでもやはりこの胸は甘く締め付けられてしまう…。
…だめだな…私は…
いつまでも…
分厚い聖書に視線を落とし、再びため息を吐いた。
…「キリストに賛美を」
ミサが終わり、閉祭・レシナチェリの聖歌を歌う紗耶たちの横、赤い絨毯を敷き詰めた身廊を、美しい凛とした姿勢を保ちながら、千晴は司祭とともに去って行った。
「…今日のミサは熱気ムンムンでしたね。
やはりイケメン助祭さんがいらっしゃると違いますねえ」
明るく陽気なシスター・マルガレーテが菜月にウィンクする。
シスター・マルガレーテはイタリア出身の合唱部の顧問だ。
イタリア人の陽気な気風そのままの修道女で生徒たちの人気者だ。
「シスター、話がわかる〜!ですよね〜?
ねえ、シスター。今の高遠先生、二宮さんの親戚なんですって。
…ねえ、二宮さん。高遠先生って独身?」
「それは私も関心がありますね!」
シスター・マルガレーテの青灰色の瞳が真剣に紗耶を見つめる。
「…ど、独身です…」
たじたじとなりながら答える紗耶を他所に、菜月とシスター・マルガレーテは盛り上がる。
「きゃ〜!シスター!どうする⁈独身だって!」
「No、No!私は神様と結婚している身ですから…不倫はいけません!」
「やだ!シスターってば!禁断〜!」
「不謹慎なお話をするのではありません!
シスター・マルガレーテまで!」
騒ぐ二人の背後からシスター・ドロテアの喝が飛んだ。
…ラテン語による福音朗読は、千晴の低音の…けれど絹のようになめらかな朗々とした美声が天井の高いカテドラルの空間に響き渡り、女学生たちは聖書から眼を離し、ある者は千晴の美貌に釘付けになり、ある者はその美しい声に心を預けるかのように、うっとりと見入るのだった。
「…高遠先生、本当にかっこいい…!
ラテン語だから何言ってるのかチンプンカンプンだけど、かっこいい!」
興奮したように囁いた菜月を、年嵩の厳格なシスターが睨みつけ諌める。
「ミス・サカイ、おしゃべりいけません」
「Sorry、シスター・ドロテア」
菜月は少しも堪えた風もなくけろりと詫びる。
その天真爛漫さが羨ましくさえ思える紗耶だった。
…確かに…
そっと、千晴を盗み見る。
…千晴お兄ちゃまは、相変わらず素敵だ…。
千晴は紗耶の母、紫織を愛していると知りながらも…それでもやはりこの胸は甘く締め付けられてしまう…。
…だめだな…私は…
いつまでも…
分厚い聖書に視線を落とし、再びため息を吐いた。
…「キリストに賛美を」
ミサが終わり、閉祭・レシナチェリの聖歌を歌う紗耶たちの横、赤い絨毯を敷き詰めた身廊を、美しい凛とした姿勢を保ちながら、千晴は司祭とともに去って行った。
「…今日のミサは熱気ムンムンでしたね。
やはりイケメン助祭さんがいらっしゃると違いますねえ」
明るく陽気なシスター・マルガレーテが菜月にウィンクする。
シスター・マルガレーテはイタリア出身の合唱部の顧問だ。
イタリア人の陽気な気風そのままの修道女で生徒たちの人気者だ。
「シスター、話がわかる〜!ですよね〜?
ねえ、シスター。今の高遠先生、二宮さんの親戚なんですって。
…ねえ、二宮さん。高遠先生って独身?」
「それは私も関心がありますね!」
シスター・マルガレーテの青灰色の瞳が真剣に紗耶を見つめる。
「…ど、独身です…」
たじたじとなりながら答える紗耶を他所に、菜月とシスター・マルガレーテは盛り上がる。
「きゃ〜!シスター!どうする⁈独身だって!」
「No、No!私は神様と結婚している身ですから…不倫はいけません!」
「やだ!シスターってば!禁断〜!」
「不謹慎なお話をするのではありません!
シスター・マルガレーテまで!」
騒ぐ二人の背後からシスター・ドロテアの喝が飛んだ。