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異邦人の庭 〜secret garden〜
第11章 ミスオブ沙棗の涙 〜甘く苦い恋の記憶〜
「…え…?」
恐る恐る貌を上げた紫織の手を、美加が痛いほどに握りしめる。

「うちのママに、このこと話したの。
ママも激怒して、まず紫織のママに直談判しに行ったの。
先週のことだよ。
いくらなんでも二人を無理やり引き離すのはひどすぎる…て。
そしたら、紫織のママによその家のことに口出しないでくれ…みたいに言われて…。
うちのママは気ィ短いから、それならこっちで勝手にやらせてもらいます!ってタンカ切って帰ってきてさ…。
それで、うちのお店の常連さんで探偵事務所の社長さんがいたの思い出して、藤木先生のご実家の調査を依頼したの。
きっと何か事情があるんだろう…てね」
「…美加…」
…美加と美加の母親の温かさと優しさが胸に応えるほどに嬉しい…。

「…そしたら、色々なことが分かったんだよ。
先生の実家…ていうか腹違いのお義兄さんの病院が経営不振でね。
長野の大きな総合病院との合併の話が出たんだって。
吸収じゃなくて合併だから名前は残るし規模は大きくなるし、お義兄さんは大乗り気でさ。
でもその条件が、院長の娘の女医さんと先生が結婚することでさ。
…何でもその女医さんが、諏訪の実家に帰ってきていた先生を見かけて…多分その義兄の画策だと思うんだけどさ…一目惚れしちゃったらしいんだよ。
先生、イケメンだしコロンビア大学出てるじゃん?
その女医さんの好みにドンピシャだったらしいんだよ。
で、病院の合併話を持ち出したらしいの。
…でもね、折悪く藤木先生のお母さんが倒れちゃって…。
前から心臓が悪くて、今、その長野の女医さんの病院に入院しているんだって。
でね、根治治療は心臓移植しかないらしくて、その女医さんのツテでボストンの大学病院で移植手術を受けることになったんだって。
…でもそれがさ、心臓移植ってすごく待つらしくて…けどそんな猶予ないから順番を一気に飛ばして手術してもらうために、その女医さんが色々手を尽くしたらしいの。
…もちろん莫大な移植費用もそのひとが用意したらしいの。
それを先生の義兄さんてひとが『母親の命を助ける代わりに結婚しろ』って、先生に迫ったんだって。
先生も散々断ったらしいんだけど…お母さんの命を盾にされたらさ…。
…先生て、母一人子一人で長いこと生活してきたらしくて、苦労したお母さんを捨てられなかったんだよ…」
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