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異邦人の庭 〜secret garden〜
第11章 ミスオブ沙棗の涙 〜甘く苦い恋の記憶〜
「…そう…だったのね…」
紫織は深く息を吐いた。
…すべてのピースが揃ったような気がしたのだ。
…きっと、そうなのだろう。
先生は、お母様のために生きることを決めたのだろう。
粛々と、諦観の感情が心の底から湧き上がる。
「…先生…優しいひとだから…あり得るわ…」
…優しいひとだから、きっとすごく苦しんだに違いない…。
苦しんだ挙句に、結論を出したのだ。
だからきっと、私に期待を持たさないように、あんな風に冷たく切り捨てたのだ…。
「紫織…。
いいの?このまま先生と別れちゃっていいの?」
美加が紫織の肩を強く揺さぶる。
「…美加…」
「紫織が先生のところに行きたいって言うならあたし、協力するよ。
あたしもママも紫織の味方だよ。
紫織には幸せになって欲しいんだから」
「…美加…」
紫織はふわりと微笑んだ。
そっと抱きつき、その肩に貌を埋める。
「…ありがとう…美加…」
「…じゃあ…」
紫織は静かに首を振る。
「…もう、いいの…」
「紫織!」
「…私が先生を追いかけたら、先生はもっともっと苦しむ。
私はもう先生を苦しめたくないの。
私が幸せになっても、先生が苦しみ続けたら意味がないわ」
「…紫織…」
ぽろぽろと涙を流し、泣きじゃくる美加の涙を拭ってやり、微笑む。
「…ありがとう。美加…。
私、美加と知り合えて本当に良かった…。
私のこと心配してくれて、ありがとう…」
「当たり前じゃん!
あたしたち、友だちでしょ?
友だちが心配すんの、当たり前じゃん!」
号泣する美加を抱きしめながら、紫織は瞼をそっと閉じた。
…さよなら…先生…。
…美しい榛色の瞳…端正な…優しい面差し…。
そして、深い深い森に咲く百合と、ひんやりしたモッシーの薫り…。
…さよなら…先生…。
…生涯、ただひとつの恋に、紫織は静かに別れを告げたのだ…。
紫織は深く息を吐いた。
…すべてのピースが揃ったような気がしたのだ。
…きっと、そうなのだろう。
先生は、お母様のために生きることを決めたのだろう。
粛々と、諦観の感情が心の底から湧き上がる。
「…先生…優しいひとだから…あり得るわ…」
…優しいひとだから、きっとすごく苦しんだに違いない…。
苦しんだ挙句に、結論を出したのだ。
だからきっと、私に期待を持たさないように、あんな風に冷たく切り捨てたのだ…。
「紫織…。
いいの?このまま先生と別れちゃっていいの?」
美加が紫織の肩を強く揺さぶる。
「…美加…」
「紫織が先生のところに行きたいって言うならあたし、協力するよ。
あたしもママも紫織の味方だよ。
紫織には幸せになって欲しいんだから」
「…美加…」
紫織はふわりと微笑んだ。
そっと抱きつき、その肩に貌を埋める。
「…ありがとう…美加…」
「…じゃあ…」
紫織は静かに首を振る。
「…もう、いいの…」
「紫織!」
「…私が先生を追いかけたら、先生はもっともっと苦しむ。
私はもう先生を苦しめたくないの。
私が幸せになっても、先生が苦しみ続けたら意味がないわ」
「…紫織…」
ぽろぽろと涙を流し、泣きじゃくる美加の涙を拭ってやり、微笑む。
「…ありがとう。美加…。
私、美加と知り合えて本当に良かった…。
私のこと心配してくれて、ありがとう…」
「当たり前じゃん!
あたしたち、友だちでしょ?
友だちが心配すんの、当たり前じゃん!」
号泣する美加を抱きしめながら、紫織は瞼をそっと閉じた。
…さよなら…先生…。
…美しい榛色の瞳…端正な…優しい面差し…。
そして、深い深い森に咲く百合と、ひんやりしたモッシーの薫り…。
…さよなら…先生…。
…生涯、ただひとつの恋に、紫織は静かに別れを告げたのだ…。