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異邦人の庭 〜secret garden〜
第12章 ミスオブ沙棗の涙 〜遠く儚い恋の記憶〜
新しい学校に、紫織はすんなりと馴染んでいった。
聖ヘレナ女学院は、関西を中心とした富裕な良家の子女が通う学校で、皆、素直でおとなしやかな生徒ばかりだった。
高校二年の三学期という微妙な時期に転校してきた紫織に、皆は最初から優しく接してくれた。
…もっとも人目を欹てるほどに美しく大人びた独特なオーラを持つ紫織は、有無を言わさずに人を魅了するものを持っていて、誰もが紫織に惹かれずにはいられなかったのだ。

紫織は熱心に勉強し、スポーツにも励んだ。
新しくできた友人に乞われてコーラス部に入り、定期発表会やコンクールの練習に精を出した。
紫織の利発さと公平さ、そして年齢より老成した落ち着きはすぐにシスターたちの眼に留まり、寄宿舎の舎監にも選ばれた。

乳児院のボランティアや教会のバザーの手伝い、そして休日は曄子の家に帰省し、カヨと共に家事を手伝った。
日曜日は、曄子が主催する茶道教室の助手を務めるようになった。

途端に紫織は、教室の中で評判となった。
「曄子先生には、こないに綺麗な姪御さんがいらしたんやねえ。
綺麗なだけやのうて、若いのによう気が利くし、しっかりしてはるしお品があるし、おつむもええしなあ」
「何より紫織さんが来ると、ぱあっと辺りが明るく華やかになってええわあ。
先生、自慢の姪御さんやねえ」
古参の生徒たちに褒めそやされて、曄子はふんと肩を聳やかした。
「そんな褒めすぎや。
まだまだ右も左も分からん未熟な子やから、皆さん、良しなに頼みますえ」
…と、謙遜しつつも、曄子は満更でもない様子だった。




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