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異邦人の庭 〜secret garden〜
第12章 ミスオブ沙棗の涙 〜遠く儚い恋の記憶〜
曄子は紫織が我儘ひとつ文句ひとつ言わずに、粛々と勉学や学校行事、ボランティア、家事、茶道教室の手伝いをする様子に、感心していた。
曄子は長年教室を主催していることから、若い娘の気持ちや性格は少なからず理解していた。
全寮制の学校の厳しさや窮屈さは中高年の曄子ですら、快適とは思えない。
おまけに唯一の休日を厳めしい叔母の家で奉仕させられるのだ。
楽しいわけがない。
せっかく観光都市の京都に来ているのに出歩くことも出来ない。
不満がない筈がない。
けれど紫織は、どこかに遊びにゆきたいと言い出すこともなかった。
我慢している風もない。
家事は自分から進んで立ち働く。
茶道教室の手伝いは、飲み込みが早く一か月でほぼ完璧にルーティンをこなすようになっていた。

生徒たちからの評判は上々だ。
風の噂から紫織目当てに若い男性の生徒が入会し始め、富裕な婦人たちからは気の早い縁談話までが持ち込まれている。

けれど、紫織はそれを知らせても特に自慢げな貌をするわけではない。
静かに微笑むだけだ。
最近曄子は自分の若い頃の着物を紫織に着せてやり、教室の手伝いをさせていた。
上等だが地味目な結城紬などを着せてもその姿は、姪ながら見惚れてしまうほどに優雅で美しいし、しっとりと艶やかですらあるのだ。

紫織は手先も器用だし、頭の回転も早い。
何よりセンスが良いので着物の着付けもすぐに覚えてしまったし、曄子の着付けや髪結いも手伝ってくれる。
紫織が髪を結うようになってからは
「曄子先生、最近若々しくてなんや素敵なお髪やねえ」
と、生徒たちの評判も良いのだ。

だから、紫織がこの家に来てから、曄子はなんとはなしに毎日が楽しい。
明日が紫織が来る日曜日かと思うと、心が弾む。

「…娘がいる…て、こんな気持ちなんやろか…」

独身を貫いている曄子は自分の人生に満足していたし、別段子ども好きでもなかったので、子どもが欲しいと思ったことはなかった。だから、こんな感情は初めてのことだった。


「…紫織さんはほんまにええ子やなあ…」
素直な言葉が口唇から溢れる。

…そうして、思わず本音を漏らしてしまうのだ。

「…蒔子さんは、あんたのどこがそんなに気に入らへんのやったんやろうねえ…」

…紫織は長い睫毛をゆっくり瞬き、薄く微笑うだけで何も言わなかった…。
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