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異邦人の庭 〜secret garden〜
第12章 ミスオブ沙棗の涙 〜遠く儚い恋の記憶〜
紫織は哲学の道から小径を少し入ったところにある古い大正レトロな喫茶店に堂島を誘った。
品の良い老夫婦二人で経営している店内には、アンティークの蓄音機から古いジャズやシャンソンが静かに流れる。
…知る人ぞ知る店なので観光客も滅多に訪れない。
ここは、紫織のお気に入りの喫茶店であった。
一人になりたい時、ふらりと立ち寄りコーヒーを飲みながらぼんやりと外の景色を見るのが好きだった。

「…本当にすごい偶然ですね。
…ちょっと驚いて…それから感動しています」
堂島は照れたように笑った。

「…本当に…」
…藤木の所縁がある人物と対面していると思うだけで、緊張感に包まれる。

「紫織さんが京都にいらっしゃるのは、風の便りに聞いていました…。
けれどまさかお会いできるとは思っていませんでした」

人なつこい笑顔を向けられ、緊張が少し解ける。
「…こちらには、お仕事で…?それとも観光ですか?」
「仕事です。
今年の秋に銀閣寺のそばに、新しくレストランをオープンする予定なんです。
オーガニック野菜を使ったベジタリアン専用のレストランです。
その打ち合わせをインテリアコーディネーターとしていたんです」
運ばれてきたコーヒーを美味しそうに飲みながら答える。

「オーガニック野菜?」
ベジタリアンは知っていたが、オーガニックはまだ耳慣れない言葉だった。
「農薬を一切使わないで育てた有機野菜のことです。
…日本ではまだ未知の分野なんですが、欧米のセレブたちの間では大変流行しているんですよ。
ニューヨークなんかオーガニックの店でないと流行らないくらいにね。
あちらのセレブはとにかく食と健康と美に貪欲ですからね。
京都は外国人観光客が多いし、京野菜は有機野菜が多いんです。
だからきっと流行るんじゃないかと考えましてね」
「…そうなんですか…」
…堂島の本業は確かホテル業なはずだが、随分手広いんだな…と思う。

「…コイツ、いろんなことに手を出しているなあ〜て呆れてますか?」
悪戯っぽい眼差しで見つめられる。
紫織は慌てて首を振る。
「あ…いいえ、そんな…」
「いいんですよ。うちの番頭たちもヒヤヒヤしてますからね。
俺が堂島の家を潰すに違いないって。
ほんと、信用のカケラもないからなあ〜」

紫織は思わず吹き出した。
「信用…ないんですか?」
堂島が眩しそうな眼差しで、頭を掻いた。


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