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異邦人の庭 〜secret garden〜
第3章 コンテ・ド・シャンボールの想い人
紗耶が千晴とともに玄関ポーチに現れると、紫織は美しいアーモンド型の瞳を瞬かせ驚いた。
「まあ、どうなさったの?千晴さん。
紗耶ちゃんを送ってきてくださったの?」
…白いレースのふんわりとしたブラウスに、雨上がりのパリに咲くラ・レーヌ・ヴィクトリアの薔薇のような色合いのフレアスカートを身に付けた紫織は、普段着なのにうっとりとするほどに美しく優美だ。
隣に立つ千晴が、一瞬眼を見張るのが手に取るように分かってしまった。
…そんな自分が哀れだと紗耶は思う。
「ええ。女学院のミサに参加したので、一緒に帰ってきました。
久しぶりに紗耶ちゃんとお話ししたかったから…」
…そうして、美しい優しい眼差しで紗耶を見下ろす。
「…紗耶ちゃん、とても綺麗になったね。
…驚いた」
ぎょっとして千晴を見上げる。
千晴の端整な澄んだ瞳に見つめられる。
「綺麗になったけれど、すぐに分かった。
…紗耶ちゃんは雰囲気は昔のままだね。清楚で物静かで…」
…なんで…そんな心にもないことを言うんだろう。
…なんで…お母様の前でそんなことを言うんだろう。
…私は…お母様みたいに美人じゃないのに。
自分が紫織のように美しくないことは、百も承知だ。
紗耶は切なくなって黙って俯いた。
「良かったわね、紗耶ちゃん。千晴お兄ちゃまに褒めていただいて…。
そうなの。紗耶ちゃんは世界一可愛いでしょう?
…私の自慢の大切な娘ですもの」
美しい紫織の手が優しく紗耶の髪を撫でる。
…まるで、小さな子ども扱いだ…。
けれど、紫織からは紛れも無い愛情が伝わるからその手をふり払うことは出来ない。
「じゃあ、僕はこれで…。
会えて嬉しかったよ、紗耶ちゃん」
爽やかに挨拶をして玄関を後にしようとする千晴に紫織の朗らかな声が掛けられた。
「千晴さん。晩御飯をご一緒に召し上がっていらして。
政彦さんはお仕事で遅いけれど…今日はテルさんご自慢の鯖の押し寿司なのよ。一度召し上がったら病みつきになるほどよ。
…あとは…私の拙い料理ですけれど、お口汚しに…」
悪戯っぽく微笑み…そうして…
紗耶の髪をもう一度愛おしげに撫で、微笑んだ。
「紗耶ちゃん、お部屋でお着替えしていらっしゃい。
…この間、買ったローラアシュレイの白地に薔薇模様のワンピースがいいんじゃないかしら?あのワンピース、色白の紗耶ちゃんにとても良く似合っていたから…」
「まあ、どうなさったの?千晴さん。
紗耶ちゃんを送ってきてくださったの?」
…白いレースのふんわりとしたブラウスに、雨上がりのパリに咲くラ・レーヌ・ヴィクトリアの薔薇のような色合いのフレアスカートを身に付けた紫織は、普段着なのにうっとりとするほどに美しく優美だ。
隣に立つ千晴が、一瞬眼を見張るのが手に取るように分かってしまった。
…そんな自分が哀れだと紗耶は思う。
「ええ。女学院のミサに参加したので、一緒に帰ってきました。
久しぶりに紗耶ちゃんとお話ししたかったから…」
…そうして、美しい優しい眼差しで紗耶を見下ろす。
「…紗耶ちゃん、とても綺麗になったね。
…驚いた」
ぎょっとして千晴を見上げる。
千晴の端整な澄んだ瞳に見つめられる。
「綺麗になったけれど、すぐに分かった。
…紗耶ちゃんは雰囲気は昔のままだね。清楚で物静かで…」
…なんで…そんな心にもないことを言うんだろう。
…なんで…お母様の前でそんなことを言うんだろう。
…私は…お母様みたいに美人じゃないのに。
自分が紫織のように美しくないことは、百も承知だ。
紗耶は切なくなって黙って俯いた。
「良かったわね、紗耶ちゃん。千晴お兄ちゃまに褒めていただいて…。
そうなの。紗耶ちゃんは世界一可愛いでしょう?
…私の自慢の大切な娘ですもの」
美しい紫織の手が優しく紗耶の髪を撫でる。
…まるで、小さな子ども扱いだ…。
けれど、紫織からは紛れも無い愛情が伝わるからその手をふり払うことは出来ない。
「じゃあ、僕はこれで…。
会えて嬉しかったよ、紗耶ちゃん」
爽やかに挨拶をして玄関を後にしようとする千晴に紫織の朗らかな声が掛けられた。
「千晴さん。晩御飯をご一緒に召し上がっていらして。
政彦さんはお仕事で遅いけれど…今日はテルさんご自慢の鯖の押し寿司なのよ。一度召し上がったら病みつきになるほどよ。
…あとは…私の拙い料理ですけれど、お口汚しに…」
悪戯っぽく微笑み…そうして…
紗耶の髪をもう一度愛おしげに撫で、微笑んだ。
「紗耶ちゃん、お部屋でお着替えしていらっしゃい。
…この間、買ったローラアシュレイの白地に薔薇模様のワンピースがいいんじゃないかしら?あのワンピース、色白の紗耶ちゃんにとても良く似合っていたから…」