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異邦人の庭 〜secret garden〜
第12章 ミスオブ沙棗の涙 〜遠く儚い恋の記憶〜
…高遠家の名前は、高校の歴史の教科書に掲載されているほど有名な一族である。
…古くは伊勢神宮の祭祀や陰陽師としても名を馳せた人物を輩出した一族であり、平安の世には占いで政にも関わり、彼らを日本のラスプーチンと評した歴史家もいる。

明治以降には、その名をやや潜めたが早くに商社や銀行の礎を築き、財を為し、東京丸の内の大方の不動産は未だに高遠家の持ち物だとも言われている…。
大戦後、GHQですらその財産を没収することはできなかった…。
当時の庶民たちは高遠一族を憧憬めいた眼差しで見つめ、その伝説を子孫たちに口伝えに語った。
そんな神話めいた一族なのだ。

紫織が淹れたミルクティを美味しそうに飲みながら、曄子は説明を続ける。
「…その高遠さんの分家筋に当たる方らしいんやけど…。
分家筋やけどえらい財産家らしいねん。
ほんで奥様が宝飾店やってはるみたいで、これまた羽振りがええらしいねんて。
その奥様が京都の香道に興味持ちはって、ぜひ体験してみたいて言わはったみたいやねん。
で、息子さんも連れてきはるんやて。
…二宮さんて方やねん、その方…」
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