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異邦人の庭 〜secret garden〜
第12章 ミスオブ沙棗の涙 〜遠く儚い恋の記憶〜
「まあまあ…!
さすがは京都ねえ。
綺麗なお嬢様のお出迎えだこと!」
その婦人は明るい声を上げながら、にこにこと広い玄関の三和土に佇んでいた。
辻ヶ花の豪奢な着物は有名作家物だろう。
帯は綸子地の黒い帯…如何にも富裕で着物道楽な婦人ぶりが伝わるものだった。

「ようこそおいでくださいました。
本日の香の会のお手伝いをさせていただきます北川と申します。
二宮様、お待ち申し上げておりました」
頭を下げ、出迎える紫織に
「二宮篤子と申します。
今日はお世話になります。
よろしくお願いいたしますね」
と丁寧に挨拶とお辞儀を返す辺り、派手な見かけとは異なり、腰の低い商売人らしい細やかな気遣いを感じる。
…名門の一族に繋がる夫人にありがちな権高い雰囲気はない。
愛嬌のある親しみやすい人柄のようだ。

…すると篤子は、慌ただしく背後を振り返り、ひらひらと手招きをする。

「ちょっと、まあちゃん!
こっちよ、こっち。
貴方、相変わらず方向音痴なんだから」
と、誰かに話しかけている様子なのだ。

篤子の声ののち…

「母様がさっさと行ってしまうから…。
タクシーにハンドバッグをお忘れでしたよ…」
やれやれといった風な若い男の声が続く。

…篤子の背後に現れたのは、背が高く上質な…けれど堅実な色合いとデザインのスーツに身を包んだ若い青年だった。

二宮篤子と一緒に現れたのだ。
恐らくは彼女の息子に違いない。
紫織はさして戸惑わずに微笑みを浮かべ、頭を下げた。

「…いらっしゃいませ。
二宮様。
お待ち申し上げておりました…」

「…あ…!」
…その青年は紫織を見た途端、フレームレスの眼鏡の奥の瞳を驚いたように見開き、動作を止めた。

そのまま、言葉も発さない息子を振り返り、篤子は陽気に笑った。

「あらまあ…嫌だわ、まあちゃん。
美人なお嬢様にお会いした瞬間、固まってしまって。
貴方、露骨すぎるわよ。
しっかりしてちょうだいよ、まあちゃんてば!」

母親に肩を叩かれてもその青年は言葉もなく、ひたすら紫織を見つめ続けていたのだった。



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