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異邦人の庭 〜secret garden〜
第12章 ミスオブ沙棗の涙 〜遠く儚い恋の記憶〜
穴が開くほど見つめられ、さすがに紫織は戸惑った。
「…あの…」
「あ、ああ…。
し、失礼いたしました。
不躾に…すみません」
慌てて長身の身体を折り曲げ詫びる青年に、篤子が可笑しそうに笑う。
「本当に不器用な息子でね…。
ほら、まあちゃん。美人のお嬢様にご挨拶なさい」
母親にど突かれて
「…に、二宮政彦です。
どうぞよろしくお願いいたします」
高価そうな…けれど地味な革の名刺入れから折り目正しく名刺を差し出された。
紫織はそれを白く細い指で受け取る。

「…ありがとうございます…」
…そこには大手メガバンクの名前と本店の名前、所属部署が書かれていた。
…経営戦略部…なんだかすごく硬そう…。
まだ学生の紫織にはピンとこない。

けれど、名刺を貰ったので、きちんと名乗ることにした。
「…北川紫織と申します。
どうぞよろしくお願いいたします」
すると青年…二宮政彦は、まるで甘く美味な砂糖菓子の味を確認するかのように
「…北川…紫織さん…」
うっとりと呟いたのだ。

「紫織さんは山科先生のお弟子さん?」
篤子がきびきびと尋ねた。
「いいえ。私の叔母が山科先生の友人で…そのご縁で本日はお手伝いにまいりました」
「ああ、そうなのね…。
京都訛りはないけれど、ご出身はどちら?」
「…東京です」
「今、おいくつ?学生さんでいらっしゃるの?」
畳み掛けるように質問を繰り出され、たじたじになっていると政彦が慌てて篤子を制した。
「母様、そんなに次から次へと質問したら失礼ですよ。
…すみません、厚かましい母親で…」
申し訳なさげに頭を下げる政彦に、紫織はにっこりと微笑む。
「…いいえ。お気になさらないでください。
そろそろお時間ですので、香室にご案内いたしますね。
…どうぞこちらへ…」

…政彦が瞬きもせず、恍惚とした眼差しで紫織を見つめていた。
その眼差しの意味するものは、恐らくひとつだろう。
紫織は男性にそんな眼差しで見られることは、慣れすぎるほど慣れていたのだ。
だから、さして気にも留めなかった。

政彦の熱い視線を、さりげなく引き剥がすように背を向け、紫織は二人を案内すべく磨き上げられた廊下を歩き始めた。

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