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異邦人の庭 〜secret garden〜
第12章 ミスオブ沙棗の涙 〜遠く儚い恋の記憶〜
「…ねね、紫織さん、二宮さんてどんな方やった?
あの有名な高遠一族の方なんやろ?」
厨で懐石膳の支度を手伝っている紫織に、逸子の古くからの友人…つまりは曄子の友人でもある…小嶋智恵子は好奇心に満ちた表情で囁いた。
面倒見が良く、また、自宅で料理教室を開いているほどの腕前を買われて、今日のように気の張る客人を持て成す時に呼ばれ、懐石料理などを振る舞うのだ。
「…そうですね…。
とても感じの良いお母様と息子様でしたわ」
古伊万里の小鉢に胡麻豆腐を綺麗に盛り付けながら、答える。
…お母様は気取りのない明るいひとだったし、息子さんは…。
熱に冒されたように紫織を食い入るように見つめていた真っ直ぐな表情を思い出す。
…生真面目そうなひとだったわ。
いかにも銀行員て感じだったけれど…。
紫織は小さく微笑む。
…無事に香席は終わったかしら…。
紫織はちらりと思いを馳せる。
『…香席の作法も知らないんです。
大丈夫かな…』
席に案内した際に、二宮政彦が困ったように囁いた。
紫織は励ますように微笑んだ。
『お作法はお気にされなくて大丈夫ですよ。
先生がお優しく教えてくださいますし…。
…それに…香道は素直な心でゆったりと薫りを愉しむことが一番大切なんだそうです。
良いお時間をお過ごし下さいね』
政彦は眩しそうな眼をして紫織を見つめ、はにかむように頷いたのだ。
あの有名な高遠一族の方なんやろ?」
厨で懐石膳の支度を手伝っている紫織に、逸子の古くからの友人…つまりは曄子の友人でもある…小嶋智恵子は好奇心に満ちた表情で囁いた。
面倒見が良く、また、自宅で料理教室を開いているほどの腕前を買われて、今日のように気の張る客人を持て成す時に呼ばれ、懐石料理などを振る舞うのだ。
「…そうですね…。
とても感じの良いお母様と息子様でしたわ」
古伊万里の小鉢に胡麻豆腐を綺麗に盛り付けながら、答える。
…お母様は気取りのない明るいひとだったし、息子さんは…。
熱に冒されたように紫織を食い入るように見つめていた真っ直ぐな表情を思い出す。
…生真面目そうなひとだったわ。
いかにも銀行員て感じだったけれど…。
紫織は小さく微笑む。
…無事に香席は終わったかしら…。
紫織はちらりと思いを馳せる。
『…香席の作法も知らないんです。
大丈夫かな…』
席に案内した際に、二宮政彦が困ったように囁いた。
紫織は励ますように微笑んだ。
『お作法はお気にされなくて大丈夫ですよ。
先生がお優しく教えてくださいますし…。
…それに…香道は素直な心でゆったりと薫りを愉しむことが一番大切なんだそうです。
良いお時間をお過ごし下さいね』
政彦は眩しそうな眼をして紫織を見つめ、はにかむように頷いたのだ。