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異邦人の庭 〜secret garden〜
第12章 ミスオブ沙棗の涙 〜遠く儚い恋の記憶〜
香席が滞りなくお開きになると、人々は隣の座敷に場所を移し、会食となった。
座敷は三十畳ほどある広々した数寄屋造りで、縁側からは枯山水の見事な庭園が見える。
石庭で有名な龍安寺の手入れも手掛ける高名な庭師に入ってもらっているというのが自慢だそうだが、それも頷けるような素晴らしい庭だ。
北山の曄子の大正モダン様式の家も立派なものだが、逸子の自宅には更に月見台まであり、外国の要人もお忍びで訪れるらしい。
そして会食ののち、急遽紫織がお茶を点てることになった。
「先程、紫織さんのお話が出ましてなあ…。
曄子さんとこで茶の湯の助手をされているとお話しましたら、皆さまそれは感心されましてなあ。
そしたら、二宮様がぜひに紫織さんにお手前を…と仰ってくださって…。
紫織さん、お願いしますなあ」
…逸子の口調は柔らかだが、その眼差しは有無を言わせぬほど真剣であった。
…二宮の機嫌を取ることは、逸子の教室の今後の運営にも関わることだと聞かされている紫織は断ることは出来なかった。
「…お茶はまだまだお勉強中の身で未熟なものですから、無作法がございましたらどうぞご容赦くださいませ」
と、断った上でお薄を点てたのだ。
座敷は三十畳ほどある広々した数寄屋造りで、縁側からは枯山水の見事な庭園が見える。
石庭で有名な龍安寺の手入れも手掛ける高名な庭師に入ってもらっているというのが自慢だそうだが、それも頷けるような素晴らしい庭だ。
北山の曄子の大正モダン様式の家も立派なものだが、逸子の自宅には更に月見台まであり、外国の要人もお忍びで訪れるらしい。
そして会食ののち、急遽紫織がお茶を点てることになった。
「先程、紫織さんのお話が出ましてなあ…。
曄子さんとこで茶の湯の助手をされているとお話しましたら、皆さまそれは感心されましてなあ。
そしたら、二宮様がぜひに紫織さんにお手前を…と仰ってくださって…。
紫織さん、お願いしますなあ」
…逸子の口調は柔らかだが、その眼差しは有無を言わせぬほど真剣であった。
…二宮の機嫌を取ることは、逸子の教室の今後の運営にも関わることだと聞かされている紫織は断ることは出来なかった。
「…お茶はまだまだお勉強中の身で未熟なものですから、無作法がございましたらどうぞご容赦くださいませ」
と、断った上でお薄を点てたのだ。