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異邦人の庭 〜secret garden〜
第12章 ミスオブ沙棗の涙 〜遠く儚い恋の記憶〜
「ふん。うちかてそれ、言うたし逸子さんも言うてくれたみたいねんけど、とにかくもう一度会わせていただいて、是非にお話をしたい…の一点張りでなあ…」
「…はあ…」

すると曄子は立板に水の如く語り始めた。

「とにかく二宮様の息子さんが紫織さんにすっかり心を奪われておしまいになったそうで…。
是非にお嫁さんにお迎えしたいと、それは驚くほどの熱心さらしいねん。
紫織さんが春から留学されると聞いて、いてもたってもいられなくなったらしゅうて早々に逸子さんに電話を掛けて来はったそうや。
息子さんだけやなく、お母さんも紫織さんをいたく気に入られたらしいわ。
こんなにお美しくて清楚で才色兼備なお嬢様は東京中を探してもいらっしゃらないだろう。
逸子さんにどうかお願いしますとえらい低姿勢で頼んで来はったらしいねん。
…ほんで、逸子さんもなあ『よう考えたらこんなええ縁談、滅多にあるものやない。
あの高遠一族の息子様で、ご実家は財産家やし、ご本人は東大卒で…。東大卒なんやて…!…ほんで、大銀行の本社勤務のエリートで…。
逸子さんも香の会の時、ようく見はったらしいけどお品はあるし穏やかやし聡明やし…背も高うてなかなかの男ぶりやし…。
第一、これだけ好条件のお相手さんに是非にと乞われるなんて女冥利に尽きる。
もし、結婚が決まったら紫織さんは立場的にも有利や。
これは纏めなあかん縁談やと思うた』…て、これまたえらい乗り気やねん」

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