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異邦人の庭 〜secret garden〜
第12章 ミスオブ沙棗の涙 〜遠く儚い恋の記憶〜
ホテルのティールームに着くと、黒服姿のウェイターに恭しく中に案内される。
グランドピアノの前に座ったピアニストが、優雅に舞踏会への誘いを奏でていた。
…ティールーム一番奥の日本庭園に面した席に、二宮政彦はいた。
近づいてくる紫織に直ぐに気付き、素早く立ち上がる。
立ち上がるとかなりな長身な青年であることが見てとれた。
「紫織さん。よく来てくださいました…。
無理を申しまして、本当に申し訳ありません」
紳士らしく、頭を下げる。
最初から低姿勢の様に、こちらが恐縮してしまう。
紫織も慌てて頭を下げる。
「いいえ。
こんにちは。先日はありがとうございました…」
形通りの挨拶をして貌を上げると、眼鏡の奥の瞳が眩しげに細められた。
「…お越しいただけなくても仕方がないと思ってお待ちしていました…」
生真面目なその言葉に、思わず頬が緩む。
「…そんな…。
…すっぽかしたりはしませんわ。
そんな失礼なことはいたしません」
「…す、すみません…」
また頭を下げる政彦に、紫織は小さく微笑む。
「謝られてばかりだわ…」
笑った紫織を一瞬、ぼうっと見つめ…
「…すみま…」
と言い掛けて、政彦は頭を掻いた。
その様はどことなくユーモラスで青年らしかった。
紫織の笑顔に釣られて緊張が解けたように、政彦は漸く笑った。
「…座りましょうか…」
如何にも育ちが良さげで聡明そうだが、意外に素朴なその表情を決して嫌いではないと、紫織は微かに思ったのだ…。
グランドピアノの前に座ったピアニストが、優雅に舞踏会への誘いを奏でていた。
…ティールーム一番奥の日本庭園に面した席に、二宮政彦はいた。
近づいてくる紫織に直ぐに気付き、素早く立ち上がる。
立ち上がるとかなりな長身な青年であることが見てとれた。
「紫織さん。よく来てくださいました…。
無理を申しまして、本当に申し訳ありません」
紳士らしく、頭を下げる。
最初から低姿勢の様に、こちらが恐縮してしまう。
紫織も慌てて頭を下げる。
「いいえ。
こんにちは。先日はありがとうございました…」
形通りの挨拶をして貌を上げると、眼鏡の奥の瞳が眩しげに細められた。
「…お越しいただけなくても仕方がないと思ってお待ちしていました…」
生真面目なその言葉に、思わず頬が緩む。
「…そんな…。
…すっぽかしたりはしませんわ。
そんな失礼なことはいたしません」
「…す、すみません…」
また頭を下げる政彦に、紫織は小さく微笑む。
「謝られてばかりだわ…」
笑った紫織を一瞬、ぼうっと見つめ…
「…すみま…」
と言い掛けて、政彦は頭を掻いた。
その様はどことなくユーモラスで青年らしかった。
紫織の笑顔に釣られて緊張が解けたように、政彦は漸く笑った。
「…座りましょうか…」
如何にも育ちが良さげで聡明そうだが、意外に素朴なその表情を決して嫌いではないと、紫織は微かに思ったのだ…。