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異邦人の庭 〜secret garden〜
第3章 コンテ・ド・シャンボールの想い人
…その話を千晴が切り出したのは、デザートの時間だった。
紫織の手作りのブラックベリーのクラフィティが供され、薫り高いアッサムティーが紫織の美しい手によって淹れられた頃だった。
ミントンの茶器に淹れられた美しい水色の紅茶を品格のある所作で口に運びながら、千晴は尋ねた。
「紗耶ちゃん、大学は外部受験するって本当?」
「…え?」
驚いてフォークの手を止める紗耶に、千晴は両手を顎の前で組みながら、尋ねた。
「星南学院大には上がらないの?」
…どうして、知っているんだろう…。
そんな個人的なことを、紫織が話すはずはない。
「…ミサの前に、紗耶ちゃんがお友達と話しているのが耳に入ってしまってね」
紗耶の疑問を明らかにするように、説明をする。
「…どうして内部進学しないの?」
「…それは…」
…千晴お兄ちゃまに大学で会いたくないからだ…。
この苦しい初恋の想いから逃げ出したいからだ…。
けれど、そんなこと…言えるはずがない。
なぜ会いたくないのかと聞かれたら…
…千晴お兄ちゃまはお母様が好きだから…私は諦めなくてはならないから…だからお兄ちゃまがいる大学には行きたくないのだと、答えるしかないからだ。
「…そうなの。
紗耶ちゃんはそのまま内部進学すると思っていたのに、四月の三者面談でいきなり担任の先生に『外部受験したい』と言い出して…。
私も相談を受けていなかったからびっくりしてしまって…。
政彦さんは紗耶ちゃんの好きなようにやらせたらいいんじゃないかと仰るんだけど…」
…私は…
と、例えようもなく美しい清らかな白百合のような貌を紗耶に向け、言い聞かせるように語り始めた。
「…紗耶ちゃんには大学受験で苦しい想いや悲しい想いをして欲しくないの。
紗耶ちゃんは身体が丈夫な方ではないし…。
このまま大学に進めば、色んなお稽古ごとも辞めずにゆったり続けられるのよ。
星南学院は良い大学だし、通い慣れた敷地内にあるし…。
…何より千晴さんがいらっしゃるから、お母様は安心だわ」
紗耶の手がぴくりと動く。
フォークが耳障りな音をがちゃりと立てて、ケーキ皿とぶつかった。
紫織の手作りのブラックベリーのクラフィティが供され、薫り高いアッサムティーが紫織の美しい手によって淹れられた頃だった。
ミントンの茶器に淹れられた美しい水色の紅茶を品格のある所作で口に運びながら、千晴は尋ねた。
「紗耶ちゃん、大学は外部受験するって本当?」
「…え?」
驚いてフォークの手を止める紗耶に、千晴は両手を顎の前で組みながら、尋ねた。
「星南学院大には上がらないの?」
…どうして、知っているんだろう…。
そんな個人的なことを、紫織が話すはずはない。
「…ミサの前に、紗耶ちゃんがお友達と話しているのが耳に入ってしまってね」
紗耶の疑問を明らかにするように、説明をする。
「…どうして内部進学しないの?」
「…それは…」
…千晴お兄ちゃまに大学で会いたくないからだ…。
この苦しい初恋の想いから逃げ出したいからだ…。
けれど、そんなこと…言えるはずがない。
なぜ会いたくないのかと聞かれたら…
…千晴お兄ちゃまはお母様が好きだから…私は諦めなくてはならないから…だからお兄ちゃまがいる大学には行きたくないのだと、答えるしかないからだ。
「…そうなの。
紗耶ちゃんはそのまま内部進学すると思っていたのに、四月の三者面談でいきなり担任の先生に『外部受験したい』と言い出して…。
私も相談を受けていなかったからびっくりしてしまって…。
政彦さんは紗耶ちゃんの好きなようにやらせたらいいんじゃないかと仰るんだけど…」
…私は…
と、例えようもなく美しい清らかな白百合のような貌を紗耶に向け、言い聞かせるように語り始めた。
「…紗耶ちゃんには大学受験で苦しい想いや悲しい想いをして欲しくないの。
紗耶ちゃんは身体が丈夫な方ではないし…。
このまま大学に進めば、色んなお稽古ごとも辞めずにゆったり続けられるのよ。
星南学院は良い大学だし、通い慣れた敷地内にあるし…。
…何より千晴さんがいらっしゃるから、お母様は安心だわ」
紗耶の手がぴくりと動く。
フォークが耳障りな音をがちゃりと立てて、ケーキ皿とぶつかった。