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異邦人の庭 〜secret garden〜
第3章 コンテ・ド・シャンボールの想い人
…お母様は…安心…。
…何が安心なのだろう…。
…ああ、そうか…。
お母様は、私が千晴お兄ちゃまがお母様を好きなことを知っているのをご存知ないからだ…。
…それから…私が千晴お兄ちゃまを好きでも、それが実らないことをご存知だからだ…。
大好きな母にそんな負の感情を持つ自分が嫌でたまらない。
でも、考えることを止められない。
「大学受験は大変なのよ。
紗耶ちゃんは幼稚園からずっと受験の苦労や大変さを知らないでしょう?
…ましてや、国立大や難関私立を狙うなら予備校に毎日通った上でおうちでも何時間もお勉強しなくてはならないのよ。
受験のプレッシャーは大変なものらしいわ。
私が主催するアロマのお教室のお母様方は皆、口を揃えて仰るわ。
…おとなしくて優しい性格の紗耶ちゃんに耐えられるかしら…?」
…そうかもしれない…。
私は…取り立てて秀才という訳ではないし、不器用だし、大学受験となれば温室育ちだから苦労するかもしれない…。
…でも…。
「…紗耶ちゃんは、他大学に進学して何かやりたいこととか目標があるのかな?」
「…やりたい…こと?」
貌を上げると、千晴が真剣な眼差しで、紗耶を見つめていた。
「そう。
他大学でやりたいことや目標がはっきりしているなら、それでもいいと思う。大学は自分が学びたいものを自由に学ぶ場所だからね。
でも、それが定まってないなら…わざわざ外部受験して苦労することはないんじゃないかな?
星南なら内部進学者が多いから、大学に入っても顔見知りがいて安心だし…。
…それに…こんな言い方は良くはないけれど、ほかの大学だとどんな素性の男子がいるか分からないからね。
その点、うちの大学の男子は育ちが良くて品行方正な学生が多い。
お嬢様育ちの紗耶ちゃんには、ちょうどいいと…」
…気がつくと紗耶は荒々しい動作で席を立ち、テーブルを両手で激しく叩いていた。
バカラの花瓶が音を立てて倒れ、スノーグースの花弁が雪が舞うようにテーブルクロスに散った。
千晴と紫織が唖然と息を飲む。
震える唇を開いて、紗耶は生まれて初めて母に…そして千晴に叫んだ。
「どうして⁈どうしてお母様も千晴お兄ちゃまもそうやって決めつけるの⁈
紗耶は馬鹿だからだめだ、紗耶は世間知らずだからだめだ、紗耶は愚図だから受験なんかしても、ほかの大学に行っても上手くいくはずがないって!!」
…何が安心なのだろう…。
…ああ、そうか…。
お母様は、私が千晴お兄ちゃまがお母様を好きなことを知っているのをご存知ないからだ…。
…それから…私が千晴お兄ちゃまを好きでも、それが実らないことをご存知だからだ…。
大好きな母にそんな負の感情を持つ自分が嫌でたまらない。
でも、考えることを止められない。
「大学受験は大変なのよ。
紗耶ちゃんは幼稚園からずっと受験の苦労や大変さを知らないでしょう?
…ましてや、国立大や難関私立を狙うなら予備校に毎日通った上でおうちでも何時間もお勉強しなくてはならないのよ。
受験のプレッシャーは大変なものらしいわ。
私が主催するアロマのお教室のお母様方は皆、口を揃えて仰るわ。
…おとなしくて優しい性格の紗耶ちゃんに耐えられるかしら…?」
…そうかもしれない…。
私は…取り立てて秀才という訳ではないし、不器用だし、大学受験となれば温室育ちだから苦労するかもしれない…。
…でも…。
「…紗耶ちゃんは、他大学に進学して何かやりたいこととか目標があるのかな?」
「…やりたい…こと?」
貌を上げると、千晴が真剣な眼差しで、紗耶を見つめていた。
「そう。
他大学でやりたいことや目標がはっきりしているなら、それでもいいと思う。大学は自分が学びたいものを自由に学ぶ場所だからね。
でも、それが定まってないなら…わざわざ外部受験して苦労することはないんじゃないかな?
星南なら内部進学者が多いから、大学に入っても顔見知りがいて安心だし…。
…それに…こんな言い方は良くはないけれど、ほかの大学だとどんな素性の男子がいるか分からないからね。
その点、うちの大学の男子は育ちが良くて品行方正な学生が多い。
お嬢様育ちの紗耶ちゃんには、ちょうどいいと…」
…気がつくと紗耶は荒々しい動作で席を立ち、テーブルを両手で激しく叩いていた。
バカラの花瓶が音を立てて倒れ、スノーグースの花弁が雪が舞うようにテーブルクロスに散った。
千晴と紫織が唖然と息を飲む。
震える唇を開いて、紗耶は生まれて初めて母に…そして千晴に叫んだ。
「どうして⁈どうしてお母様も千晴お兄ちゃまもそうやって決めつけるの⁈
紗耶は馬鹿だからだめだ、紗耶は世間知らずだからだめだ、紗耶は愚図だから受験なんかしても、ほかの大学に行っても上手くいくはずがないって!!」