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異邦人の庭 〜secret garden〜
第12章 ミスオブ沙棗の涙 〜遠く儚い恋の記憶〜
「紫織さん、私からもこの通りお願いいたします。
貴女にぜひに我が家にお嫁に来ていただきたいのよ。
私も貴女を一眼見た時から、息子のお嫁様は貴女しかいない!と確信したの」

応接間に通し、お茶を勧める間もなく、篤子は紫織に膝を着かんばかりに懇願を始めた。
「二宮さん。…あの…。どうか、頭を上げてください」
困惑する紫織を、篤子はアイラインが引かれた強い瞳で見上げる。
「紫織さん。貴女、政彦をどう思われます?」
如何にも経営者らしいはきはきした物言いで尋ねられ、紫織は思わず答えた。
「…とてもお優しくて感じの良い方だと思います…」
「そうでしょう?」
篤子はにっこりと笑った。
「政彦は見た目は地味なんですけれど、とても真面目で誠実で心優しい性格なんですよ。
もちろん仕事熱心ですし、会社でもなかなか期待されているそうです。
今年二十六歳になりますけれど女性関係は至ってクリーンです。
母親の私が言うのも何ですが、夫にするにはベストなタイプだと思うのですよ。
…まあ、派手さはないですし、流行りのイケメンタイプでもないですから、洗練された紫織さんからしたら詰まらなく感じるかもしれませんが…」
「そんな風には思っていません。
…ただ…あの…」
…スムーズに断るのに最良の理由をなんとか考える。

「…私の父は普通のサラリーマンです。
とても二宮さんのお家に相応しいような家柄ではありません」
「そんなこと…!
お父様はM物産の取締役のおひとりでいらっしゃるのでしょう?
ご立派なものですわ。
こんなにお品の良い叔母様もいらっしゃるし…」
傍らの曄子に微笑みかける。

…それに…
と、篤子は大事な秘密を共有するかのように、やや声を潜めてみせる。
「…高遠一族とはいえ、うちは分家の分家筋なんですよ。
…主人の父は先代の末の弟でしたが、母はかつて赤坂の芸者をしておりましてね…つまりお妾さんでしたの。
幸い主人は父親に可愛がられ、奥様にも了承をいただいて認知され、一族の子どもと認められましたが…そんな訳で、本家とは少し距離があるんです。
ですから気楽な家なんですのよ。
だから私も伸び伸び自分で事業を興したり好きなことが出来たのです」
「…はあ…」

篤子はにっこり笑ってみせた。
手入れの行き届いた白い頰には無邪気な笑窪が出来た。

「ですから紫織さん、どうぞご安心なさってお嫁にいらして」
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