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異邦人の庭 〜secret garden〜
第12章 ミスオブ沙棗の涙 〜遠く儚い恋の記憶〜
「…紫織がいよいよ結婚かあ…!
なんか感慨深いなあ…」
感無量といった風に首を振る美加は、高校生の頃から少しも変わらないボーイッシュなボブカットの髪にきりりとした眉のハンサム貌だ。
そこにどこかのどかな自信が加わって、人懐っこい雰囲気を漂わせている。
紫織がベルナデッタ女学院を中退した形になっても、美加はずっと親友でいてくれた。
…そうして、紫織の結婚式を控えた五月の休日、美加は紫織に会いに来てくれたのだ。
京都植物園そばの甘味処で、二人は久しぶりの再会を喜び合った。
美加は大学を卒業し、来月から家業を継ぐべく金沢の老舗割烹料亭に修行に出るのだそうだ。
「…と言っても一年だけどね。
意地悪女将にいびられたら一日で飛び出すつもりだけどね」
辻利の抹茶パフェを口に運びながら、涼しい貌で嘯いた。
「だけど、紫織はそうはいかないもんね。
結婚したら、やっぱ辞める!ていかないじゃん。
紫織さあ、よく決心したね。
大学卒業してすぐ結婚なんて、今時珍しくない?
…しかもあの高遠一族のひととなんてさあ!
ママに言ったら大興奮してたよ。
紫織ちゃんが本物のセレブマダムになるのね〜!て」
紫織は苦笑する。
「高遠一族…と言ってもたくさんいらっしゃるのよ。
…ご本家様とは違うから、そんなに大変じゃないと思うわ…」
…そう言いながら紫織は政彦と共に婚約が整った旨の挨拶に訪れた松濤の高遠本家の想像を絶するような重厚で豪奢なゴシック様式の屋敷と美しい早咲きのイングリッシュローズが咲き乱れていた英国式庭園を思い出していた。
…その優雅にして孤高の城に君臨するかのように威風堂々と存在する…まるで眠れる森の美女のマレフィセントのような…どこか魔女めいた女当主・高遠徳子と…
…そして、琥珀色に近い鳶色の瞳をした…さながらデジレ王子のような際立った美貌の孫息子・千晴に想いを馳せるのだった。
なんか感慨深いなあ…」
感無量といった風に首を振る美加は、高校生の頃から少しも変わらないボーイッシュなボブカットの髪にきりりとした眉のハンサム貌だ。
そこにどこかのどかな自信が加わって、人懐っこい雰囲気を漂わせている。
紫織がベルナデッタ女学院を中退した形になっても、美加はずっと親友でいてくれた。
…そうして、紫織の結婚式を控えた五月の休日、美加は紫織に会いに来てくれたのだ。
京都植物園そばの甘味処で、二人は久しぶりの再会を喜び合った。
美加は大学を卒業し、来月から家業を継ぐべく金沢の老舗割烹料亭に修行に出るのだそうだ。
「…と言っても一年だけどね。
意地悪女将にいびられたら一日で飛び出すつもりだけどね」
辻利の抹茶パフェを口に運びながら、涼しい貌で嘯いた。
「だけど、紫織はそうはいかないもんね。
結婚したら、やっぱ辞める!ていかないじゃん。
紫織さあ、よく決心したね。
大学卒業してすぐ結婚なんて、今時珍しくない?
…しかもあの高遠一族のひととなんてさあ!
ママに言ったら大興奮してたよ。
紫織ちゃんが本物のセレブマダムになるのね〜!て」
紫織は苦笑する。
「高遠一族…と言ってもたくさんいらっしゃるのよ。
…ご本家様とは違うから、そんなに大変じゃないと思うわ…」
…そう言いながら紫織は政彦と共に婚約が整った旨の挨拶に訪れた松濤の高遠本家の想像を絶するような重厚で豪奢なゴシック様式の屋敷と美しい早咲きのイングリッシュローズが咲き乱れていた英国式庭園を思い出していた。
…その優雅にして孤高の城に君臨するかのように威風堂々と存在する…まるで眠れる森の美女のマレフィセントのような…どこか魔女めいた女当主・高遠徳子と…
…そして、琥珀色に近い鳶色の瞳をした…さながらデジレ王子のような際立った美貌の孫息子・千晴に想いを馳せるのだった。