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異邦人の庭 〜secret garden〜
第12章 ミスオブ沙棗の涙 〜遠く儚い恋の記憶〜
「…貴女が紫織さん…?」
重々しい時代と歴史を感じさせる調度品に囲まれた客間にて、政彦に紹介され恭しく挨拶をした紫織に、その冷ややかな声が掛かった。
魔女めいた細く美しい眉を跳ね上げながら、なぜか徳子は紫織を舐めるように見つめていた。
さながら英国貴族の気位の高い老貴婦人を思わせるその猛禽類に似た眼差しが驚いたように見開かれていた。
傍らの世にも美しい少年…千晴は息を詰めるように紫織を凝視していた。
…そして…
「…お母様によく似ていらっしゃる…」
そのまだ幼く、硬い薔薇の蕾のような口唇から独り言のように漏れたのだ。
「そうなのですか?
僕は千晴のお母様のお貌は存じ上げないから…」
政彦が意外そうに眼を瞬かせた。
…政彦は昨年の千晴の中学受験の際、家庭教師を務めていたので、まるで兄弟のように親しい間柄であるらしい。
「似ていますよ。
…こうして紫織さんが佇んでいるのを拝見すると、まるで花織さんが生き返ったようです…」
徳子はそう言うと、イタリア大理石のマントルピースの上に置かれた大判の写真立てを政彦に手渡した。
政彦が息を呑んだ。
ややもして、微かに困惑の色を含んだ声が響いた。
「…本当ですね…。まるで、生写しだ…」
重々しい時代と歴史を感じさせる調度品に囲まれた客間にて、政彦に紹介され恭しく挨拶をした紫織に、その冷ややかな声が掛かった。
魔女めいた細く美しい眉を跳ね上げながら、なぜか徳子は紫織を舐めるように見つめていた。
さながら英国貴族の気位の高い老貴婦人を思わせるその猛禽類に似た眼差しが驚いたように見開かれていた。
傍らの世にも美しい少年…千晴は息を詰めるように紫織を凝視していた。
…そして…
「…お母様によく似ていらっしゃる…」
そのまだ幼く、硬い薔薇の蕾のような口唇から独り言のように漏れたのだ。
「そうなのですか?
僕は千晴のお母様のお貌は存じ上げないから…」
政彦が意外そうに眼を瞬かせた。
…政彦は昨年の千晴の中学受験の際、家庭教師を務めていたので、まるで兄弟のように親しい間柄であるらしい。
「似ていますよ。
…こうして紫織さんが佇んでいるのを拝見すると、まるで花織さんが生き返ったようです…」
徳子はそう言うと、イタリア大理石のマントルピースの上に置かれた大判の写真立てを政彦に手渡した。
政彦が息を呑んだ。
ややもして、微かに困惑の色を含んだ声が響いた。
「…本当ですね…。まるで、生写しだ…」