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異邦人の庭 〜secret garden〜
第12章 ミスオブ沙棗の涙 〜遠く儚い恋の記憶〜
紫織は政彦から手渡された写真立てを遠慮勝ちに受け取った。
「…まあ…」
思わず吐息が漏れた。
…似ていた…。
それは、若い夫婦がまだ幼い子どもを抱いた家族写真だった。
優雅な着物姿の若く美しい女性が、千晴の母らしい。
…卵形の風情ある白い貌、形の良い顎、大きな瞳、長い睫毛、すんなりと整った鼻筋、薔薇色の唇、華奢な少女のような身体つき…
紫織が見ても、驚くほど自分に良く似たその面差しに思わず見入ってしまう…。
「…花織さんはそれはそれは美しく嫋やかな女性でした。
けれど私の息子、千聖とともに不幸な列車事故で呆気なく亡くなってしまいました…。
…千晴さんを遺して…。
千晴さんはまだ三歳でした…。
両親の記憶は朧げでしょう…」
獅子のように恐ろしく厳しいと畏れられている徳子が、痛ましげに…けれど愛おしげに傍らの少年を見遣る。
…どうやら、徳子にとって千晴は掌中の珠のように大切な存在であるらしかった。
「政彦さんのお嫁様になられる方が花織さんに生き写しなんて、不思議な縁を感じますこと…。
…紫織さん、貴女はこの高遠一族のお嫁様に相応しい方だわ」
そうして、まるで女王陛下が家臣に承認を与えるかのように威厳を持って言い放ったのだ。
「二人の婚姻を正式に認めます。
…つきましては我が一族の慣習に倣い、この屋敷で結婚式を挙げるように」
「…まあ…」
思わず吐息が漏れた。
…似ていた…。
それは、若い夫婦がまだ幼い子どもを抱いた家族写真だった。
優雅な着物姿の若く美しい女性が、千晴の母らしい。
…卵形の風情ある白い貌、形の良い顎、大きな瞳、長い睫毛、すんなりと整った鼻筋、薔薇色の唇、華奢な少女のような身体つき…
紫織が見ても、驚くほど自分に良く似たその面差しに思わず見入ってしまう…。
「…花織さんはそれはそれは美しく嫋やかな女性でした。
けれど私の息子、千聖とともに不幸な列車事故で呆気なく亡くなってしまいました…。
…千晴さんを遺して…。
千晴さんはまだ三歳でした…。
両親の記憶は朧げでしょう…」
獅子のように恐ろしく厳しいと畏れられている徳子が、痛ましげに…けれど愛おしげに傍らの少年を見遣る。
…どうやら、徳子にとって千晴は掌中の珠のように大切な存在であるらしかった。
「政彦さんのお嫁様になられる方が花織さんに生き写しなんて、不思議な縁を感じますこと…。
…紫織さん、貴女はこの高遠一族のお嫁様に相応しい方だわ」
そうして、まるで女王陛下が家臣に承認を与えるかのように威厳を持って言い放ったのだ。
「二人の婚姻を正式に認めます。
…つきましては我が一族の慣習に倣い、この屋敷で結婚式を挙げるように」