この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
異邦人の庭 〜secret garden〜
第12章 ミスオブ沙棗の涙 〜遠く儚い恋の記憶〜
紫織は驚きに千晴を見上げた。

「…紫織さんは僕の母にそっくりです。
…いえ、僕の記憶の中の母に…ですけれど…。
僕には生前の母の記憶はほとんどないので…残された写真を見てお母様はこんな方なんだろうな…とずっとイメージしてきました。
そのひとに紫織さんはそっくりなのです。
先ほどお会いして、本当に驚きました。
…だから、政彦兄さんが羨ましいです。
こんなにお美しいひとを花嫁にできるなんて…。
僕はまだ子どもだから、紫織さんを花嫁に迎えることができない」
「…まあ…」
少年の熱烈な告白とも取れる率直すぎる言葉に、紫織はどきりとした。
…それが例え亡き母への思慕が無意識に形を変えたものだとしても…。

「貴方のお母様には遠く及ばないと思いますけれど…とても光栄だわ。
千晴さん。
これから仲良くしていただけましたら嬉しいわ」
「もちろんです。
紫織さん…」
少年のしなやかで清潔な手が再び差し延べられた。
紫織は引き寄せられるように手を差し出す。
そっと、その手が握りしめられ…
「…綺麗な手ですね…」
うっとりとした呟きが千晴の形の良い唇から漏れた。
「…良い薫りがする…」
彼はそのまま紫織の白い甲に唇を押し当てた。

「…っ…」
紫織は声にならない声を上げた。
…その手はひんやりと冷たかったのに、少年の唇は燃えるように熱かったのだ。

「…貴女に巡り会えたのは運命だ…」
独り言のような…陶酔めいた言葉が、紫織の掌に染み込む。

…同じテーブルの先では、彼の祖母と…何より紫織の夫となるひとが和やかに話をしていると言うのに…。

その背徳めいた光景に、紫織は微かな甘美なときめきと仄暗い快美感を覚えた。

…だから、少年の耳にだけ届くように囁き返した。

「…ねえ、千晴さん。
…秘すれば花と申しますのよ…」
千晴は潤んだ鳶色の瞳を見開き紫織を見つめると、熱っぽい表情で小さく頷いたのだ。





/789ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ