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異邦人の庭 〜secret garden〜
第12章 ミスオブ沙棗の涙 〜遠く儚い恋の記憶〜
不意をつかれ、紫織は息を呑む。
すぐに美加が済まなそうに謝る。
「…ごめん。紫織…」
紫織は首を振り、朗らかに笑った。
「…ううん…。大丈夫。
…そうね…。もう、忘れたわ…」
「…本当に?」
「ええ…。
…だって、先生はもう結婚して奥さんとニューヨークに住んでいるのよ。
あれから五年も経ってしまったし…きっとお子さんとかもいるかもしれないわ…。
…私がいつまでも思っていても仕方ないじゃない?」
…そうなのだ。
もう、五年も前のことなのだ。
私の中の時間は、あのときのままで止まったままだけれど…。
「…うん…。そうだよね…」
「だから、もう忘れたの」
…そうして、自分に言い聞かせるようにはっきりと告げる。
「すべて忘れて、政彦さんと幸せになることに決めたの」
「そうか…。
うん。それがいいね。
紫織には幸せになって欲しいもん」
美加が力強く頷き、紫織の手を握りしめた。
「幸せになるんだよ、紫織」
その手はとても温かかった。
柔らかな手のひらから、美加の友情がじわりと染み込む。
…だから…
「ありがとう、美加。
きっと幸せになるわ」
…初恋のすべてを封印するのだ。
私の胸の奥深く…誰にも知られない場所に仕舞い込んで…。
紫織は美加の手を握り返し、晴れやかな笑顔で笑ったのだ。
すぐに美加が済まなそうに謝る。
「…ごめん。紫織…」
紫織は首を振り、朗らかに笑った。
「…ううん…。大丈夫。
…そうね…。もう、忘れたわ…」
「…本当に?」
「ええ…。
…だって、先生はもう結婚して奥さんとニューヨークに住んでいるのよ。
あれから五年も経ってしまったし…きっとお子さんとかもいるかもしれないわ…。
…私がいつまでも思っていても仕方ないじゃない?」
…そうなのだ。
もう、五年も前のことなのだ。
私の中の時間は、あのときのままで止まったままだけれど…。
「…うん…。そうだよね…」
「だから、もう忘れたの」
…そうして、自分に言い聞かせるようにはっきりと告げる。
「すべて忘れて、政彦さんと幸せになることに決めたの」
「そうか…。
うん。それがいいね。
紫織には幸せになって欲しいもん」
美加が力強く頷き、紫織の手を握りしめた。
「幸せになるんだよ、紫織」
その手はとても温かかった。
柔らかな手のひらから、美加の友情がじわりと染み込む。
…だから…
「ありがとう、美加。
きっと幸せになるわ」
…初恋のすべてを封印するのだ。
私の胸の奥深く…誰にも知られない場所に仕舞い込んで…。
紫織は美加の手を握り返し、晴れやかな笑顔で笑ったのだ。