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異邦人の庭 〜secret garden〜
第12章 ミスオブ沙棗の涙 〜遠く儚い恋の記憶〜
「…お父様…」
紫織の美しい瞳が見開かれた。
…こんな場面で…あのひとの何を聞かされるのだろうか…。
紫織は握りしめた手が冷たくなるのを感じた。
可憐な紅で彩られた形の良い口唇が微かに震える。
それらの表情の変化は美しく繊細なベールで隠され、亮介には気取られることはなかった。

典雅な意匠が凝らされた飾り窓の外、庭園に続々と集まる華やかな来賓の姿にやや驚きながら、亮介は続けた。

「…あの教師のことを、私もあの時は腹立たしく思い、咄嗟に手荒な真似までしてしまった。
…しかし…あの後、学院長から聞かされたのだよ。
彼は、自分はどうなっても良いから紫織が学院に留まれるようにと懇願してきたらしい…。
すべての責任は自分にある。
紫織には一片の責任もない。
寧ろ、紫織は被害者だと。
紫織は優秀で人望もあり…何より優しく、思いやりに溢れた素晴らしい生徒だと。
自分のせいで紫織の輝かしい将来が損なわれてはならない。
そのためなら自分は何でもする。何もかも失っても構わないのだと…。
学院長はわざわざそれを私に伝えにきたのだ。
…二人を許してやる訳にはいかないかと…」

身体が…震える。
…熱いものが込み上げ、それを押さえつけるので精一杯だ。
紫織は両手を強く握り締める。
でなければ、叫んでしまいそうになる。
…今、叫んでしまったら…私は…

「…彼は…もしかしたら本当に紫織を愛していたのかもしれないと、私は思ったのだ。
何か事情があって、紫織を裏切るような形になったのではないかと…。
…蒔子が…彼に何らかの脅しをかけたことも考えられる。
あの頃の蒔子は本当に異常だったからな…。
…けれど、私は…父親として、やはりどうしてもお前たちの恋愛を許す訳にはいかなかったのだ。
…だが、今となっては…もっと冷静に彼の話を聞くべきだったのかもしれないと、それだけが後悔なのだよ…」

悔いるようにため息を吐いた亮介に、紫織は瞼を閉じ…やがて、ゆっくりと口唇を開いた…。


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