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異邦人の庭 〜secret garden〜
第12章 ミスオブ沙棗の涙 〜遠く儚い恋の記憶〜
「…もう…いいの…」
…叫んでは、ならない…。
「…紫織?」
紫織は、ベール越しに微かに微笑んだ。
…忘れるのだ…。
「…もう、終わったことなんです…。
もう、忘れました…何もかも…。
…私は…政彦さんと幸せになると決めたのです…」
…そう、忘れるよりほかにないのだ…。
「…そうか…」
どこか安堵したように、亮介が頷く。
「そうだな…。お前は素晴らしい良縁を得たのだ。
政彦くんは素晴らしい男性だ。
家柄や財力だけではない。
知的で品格があり穏やかで…しかも将来、一流のバンカーになる資質を持った青年だ。
何よりお前を誰よりも愛している。
それが伝わってくる。
…彼ならお前を必ず幸せにしてくれるだろう。
お前は良い伴侶に恵まれたのだ」
紫織は眼を伏せ、頷く。
「…ええ…。
そうね…。政彦さんはきっと私を幸せにしてくださるわ…」
…小さく、呟いた。
「…私は、政彦さんと幸せになるの…」
…高遠家の敷地内にあるという礼拝堂の鐘が、厳かに鳴り始めた。
…叫んでは、ならない…。
「…紫織?」
紫織は、ベール越しに微かに微笑んだ。
…忘れるのだ…。
「…もう、終わったことなんです…。
もう、忘れました…何もかも…。
…私は…政彦さんと幸せになると決めたのです…」
…そう、忘れるよりほかにないのだ…。
「…そうか…」
どこか安堵したように、亮介が頷く。
「そうだな…。お前は素晴らしい良縁を得たのだ。
政彦くんは素晴らしい男性だ。
家柄や財力だけではない。
知的で品格があり穏やかで…しかも将来、一流のバンカーになる資質を持った青年だ。
何よりお前を誰よりも愛している。
それが伝わってくる。
…彼ならお前を必ず幸せにしてくれるだろう。
お前は良い伴侶に恵まれたのだ」
紫織は眼を伏せ、頷く。
「…ええ…。
そうね…。政彦さんはきっと私を幸せにしてくださるわ…」
…小さく、呟いた。
「…私は、政彦さんと幸せになるの…」
…高遠家の敷地内にあるという礼拝堂の鐘が、厳かに鳴り始めた。