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異邦人の庭 〜secret garden〜
第12章 ミスオブ沙棗の涙 〜遠く儚い恋の記憶〜
…軽やかなノックが響く。
曄子は、先ほど挨拶に来た。
蒔子は体調不良で式は欠席とのことだった。
黒留袖姿の曄子はもはや母親代わりだ。
いや、実の母親以上に今日の挙式を喜んでくれた。
『ほんまに良かったなあ…。
紫織さん、ほんまに光り輝くように綺麗やわ…。
なんてお美しいお嫁様やろ…』
そう言って涙ぐんだ。
…蒔子が欠席で良かった…と、紫織は思った。
今、もし蒔子の貌を見たら、自分は何を叫ぶか分からない…。
そう思ったからだ。
…今、お母様だけには会いたくない…。
…誰かしら…?
涙を拭いながら振り返ると、黒い燕尾服の正装に身を包んだ千晴が淡い薄紅色の薔薇のブーケを手に佇んでいた。
「…千晴さん…」
…その美しい絵姿のような少年に思わず見惚れる。
「…紫織さん…」
眩しげな眼差しでうっとりと微笑みかけ…紫織のうっすらと浮かんだ涙を認め、端正な眉を顰めた。
「…どうされたのですか?
泣いていらしたのですか?」
曄子は、先ほど挨拶に来た。
蒔子は体調不良で式は欠席とのことだった。
黒留袖姿の曄子はもはや母親代わりだ。
いや、実の母親以上に今日の挙式を喜んでくれた。
『ほんまに良かったなあ…。
紫織さん、ほんまに光り輝くように綺麗やわ…。
なんてお美しいお嫁様やろ…』
そう言って涙ぐんだ。
…蒔子が欠席で良かった…と、紫織は思った。
今、もし蒔子の貌を見たら、自分は何を叫ぶか分からない…。
そう思ったからだ。
…今、お母様だけには会いたくない…。
…誰かしら…?
涙を拭いながら振り返ると、黒い燕尾服の正装に身を包んだ千晴が淡い薄紅色の薔薇のブーケを手に佇んでいた。
「…千晴さん…」
…その美しい絵姿のような少年に思わず見惚れる。
「…紫織さん…」
眩しげな眼差しでうっとりと微笑みかけ…紫織のうっすらと浮かんだ涙を認め、端正な眉を顰めた。
「…どうされたのですか?
泣いていらしたのですか?」