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異邦人の庭 〜secret garden〜
第3章 コンテ・ド・シャンボールの想い人
…夜の帳が下りきり、部屋は闇色に支配された。
けれど、窓枠に絡みつく薄紅色のローズマリーとアイスバーグの薔薇の花が仄かに白く光を放ち、灯りを灯したように見えるのだ。
美しい薔薇の仄白い後ろ姿が見られるこの風景が、紗耶は大好きだった。
ローズマリーの柔らかな果実のような薫りが開け放たれた窓から漂い、傷ついた紗耶の心を微かに癒してゆく。
…密やかな、ノックの音が聞こえた。
ドアを背にして座り込んでいる紗耶は身を硬くした。
「…紗耶ちゃん。…僕だよ…」
…低音のなめらかな美しい声…。
…千晴お兄ちゃま…!
そっと振り返る。
「…そこにいるなら聞いて欲しい。
開けなくていいから。
返事もしなくていいから」
「……」
ドアを見つめる。
「…ごめんね。紗耶ちゃん。
…僕はきついことを言った。
紗耶ちゃんの気持ちも考えないで、自分の考えを押し付けてしまった。
…紗耶ちゃんに星南に入ってほしかったのは本音だ。
紗耶ちゃんは小さな頃から変わらずに無垢で穢れを知らない女の子で…だから、心配しすぎてしまったんだ。
君に余計な苦労をして欲しくなくて…」
…いや…、違うな…。
独り言と、やや躊躇い勝ちの沈黙ののちに…
「…紗耶ちゃんを、僕は近くで見守りたかったんだ」
けれど、窓枠に絡みつく薄紅色のローズマリーとアイスバーグの薔薇の花が仄かに白く光を放ち、灯りを灯したように見えるのだ。
美しい薔薇の仄白い後ろ姿が見られるこの風景が、紗耶は大好きだった。
ローズマリーの柔らかな果実のような薫りが開け放たれた窓から漂い、傷ついた紗耶の心を微かに癒してゆく。
…密やかな、ノックの音が聞こえた。
ドアを背にして座り込んでいる紗耶は身を硬くした。
「…紗耶ちゃん。…僕だよ…」
…低音のなめらかな美しい声…。
…千晴お兄ちゃま…!
そっと振り返る。
「…そこにいるなら聞いて欲しい。
開けなくていいから。
返事もしなくていいから」
「……」
ドアを見つめる。
「…ごめんね。紗耶ちゃん。
…僕はきついことを言った。
紗耶ちゃんの気持ちも考えないで、自分の考えを押し付けてしまった。
…紗耶ちゃんに星南に入ってほしかったのは本音だ。
紗耶ちゃんは小さな頃から変わらずに無垢で穢れを知らない女の子で…だから、心配しすぎてしまったんだ。
君に余計な苦労をして欲しくなくて…」
…いや…、違うな…。
独り言と、やや躊躇い勝ちの沈黙ののちに…
「…紗耶ちゃんを、僕は近くで見守りたかったんだ」