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異邦人の庭 〜secret garden〜
第13章 ミスオブ沙棗の涙 〜初恋のゆくえ〜
まるで初心な少女のように身体を丸め、広いダブルベッドの端に後退りする。
「…紫織…?」
政彦の驚いたような表情を見て、紫織は我に帰る。
「どうしたの?紫織…」

「…ご、ごめんなさい…」
自分に動揺しながら、詫びる。

「…私…疲れているの…。
だから…ごめんなさい…」
まるで処女の少女のようにブランケットを胸に引き上げ、怯えたように謝る紫織を、政彦はどこか痛むような表情を一瞬し…すぐに優しく微笑んだ。

「…いいんだよ。 謝ることはない。
僕こそ、ごめんね、紫織…」
恐る恐るといった風に紫織の髪を撫でる。

「…ゆっくり休むといい…。
僕は客用寝室で休むよ」
「…政彦さん…いいのよ、ここで寝んで…」
慌てて声をかける。

政彦は紫織を安心させるような笑みのまま、ベッドから立ち上がる。
「気にしないで。僕は明日も早いし。
君はゆっくり寝なさい…」
…そうして、労るように優しく紫織の額にキスを落とした。

「…おやすみ、紫織…」

寝室のドアが静かに閉まり、紫織は深いため息を吐いた。

…何をやっているんだろう…四十にもなって…。
…今さら…あのひとを思い出すなんて…。
…今さら…あのひとが忘れられないなんて…。

両手に貌を埋める。
…早く忘れなければ…あのひとを思い出して、どうなるというの…。

突然の強い風が寝室のカーテンを激しく揺らす。
紫織は、ぼんやりと窓の外を見上げる。

…そこには、セント・セシリアの甘く切ない薔薇の薫りが漂うだけだった。

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