この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
異邦人の庭 〜secret garden〜
第13章 ミスオブ沙棗の涙 〜初恋のゆくえ〜
「…そんな…」
…お母様がそんなことを…?
信じられない…。
「…だから、本当はあんたが生まれたことが災いなのではなく、愛せない自分に育てられるあんたが幸いやない…と言いたかったんやと思うわ。
このひとはほんまに言葉足らずやねん。
素直になれんおひとなんよ」
ぼんやりとしたままの蒔子の肩を軽くとんとん叩く。
…けれど…それならなぜ…
紫織は震える声で尋ねる。
「…だって…それなら…なぜ私と先生の恋を…」
…引き裂こうとしたのか?
それもとても冷酷なやり方で…。
「…それはなあ…蒔子ちゃんの初恋が自分のお母さんに壊されてしもうたからやと思うわ…」
曄子がため息を吐きながら語り出した。
「うちが西陣織の工房とその経営を手広くしていたのは前に言うたやろ?
蒔子ちゃんはなあ、うちに居た若い職人さんに恋をしたんや。
まだ若い頃の話やで。
そんで、その職人さんも蒔子ちゃんを好きにならはって…若い二人は結婚の約束もしたんや」
驚きに眼を見張る。
「…お母様が…?」
「ふん…。
けどそれがお母さんに知られて、頭から反対されたねん。
そんな身分も何もないヒラの職人と結婚なんて絶対にあかんて。
お前は家名に泥塗る気ィかて…そらえらい剣幕で怒らはってなあ…。
無理やり二人を別れさせて、急いで亮介さん…あんたのお父さんとの縁談を勝手に決めてしもたんよ」
「そんな横暴な…!」
紫織は思わず声を上げた。
「…昔の旧家なんてそんなもんやったんよ。
あたしかてあんたは家を継ぐんやから、長男はあかんて結婚反対されたしなあ。
…蒔子ちゃんは結局不承不承、亮介さんとこに嫁ぎはったんよ。
けど、そんな蒔子ちゃんの気持ち、亮介さんにかて伝わるわな。
自分に心を開かない蒔子ちゃんに亮介さんがうんざりするのも仕方ないような気がするしなあ…。
もちろん浮気する亮介さんも悪いけど…。
…まあ、最初から、お互いがお互いを向いていない結婚だったんよ…」
…そして、曄子は蒔子の心を代弁するかのように、言葉を選びながら続けた。
「…蒔子ちゃん、あんたが羨ましかったんやと思うわ…。
好きな人に好かれて…綺麗で、きらきら輝いているあんたが…。
…自分もそうなりたかったんやろうなあ…」
…やったことはあんまりやし、母親失格やけど、けど…不憫なひとなんや…。
その一言が紫織の胸に響いた…。
…お母様がそんなことを…?
信じられない…。
「…だから、本当はあんたが生まれたことが災いなのではなく、愛せない自分に育てられるあんたが幸いやない…と言いたかったんやと思うわ。
このひとはほんまに言葉足らずやねん。
素直になれんおひとなんよ」
ぼんやりとしたままの蒔子の肩を軽くとんとん叩く。
…けれど…それならなぜ…
紫織は震える声で尋ねる。
「…だって…それなら…なぜ私と先生の恋を…」
…引き裂こうとしたのか?
それもとても冷酷なやり方で…。
「…それはなあ…蒔子ちゃんの初恋が自分のお母さんに壊されてしもうたからやと思うわ…」
曄子がため息を吐きながら語り出した。
「うちが西陣織の工房とその経営を手広くしていたのは前に言うたやろ?
蒔子ちゃんはなあ、うちに居た若い職人さんに恋をしたんや。
まだ若い頃の話やで。
そんで、その職人さんも蒔子ちゃんを好きにならはって…若い二人は結婚の約束もしたんや」
驚きに眼を見張る。
「…お母様が…?」
「ふん…。
けどそれがお母さんに知られて、頭から反対されたねん。
そんな身分も何もないヒラの職人と結婚なんて絶対にあかんて。
お前は家名に泥塗る気ィかて…そらえらい剣幕で怒らはってなあ…。
無理やり二人を別れさせて、急いで亮介さん…あんたのお父さんとの縁談を勝手に決めてしもたんよ」
「そんな横暴な…!」
紫織は思わず声を上げた。
「…昔の旧家なんてそんなもんやったんよ。
あたしかてあんたは家を継ぐんやから、長男はあかんて結婚反対されたしなあ。
…蒔子ちゃんは結局不承不承、亮介さんとこに嫁ぎはったんよ。
けど、そんな蒔子ちゃんの気持ち、亮介さんにかて伝わるわな。
自分に心を開かない蒔子ちゃんに亮介さんがうんざりするのも仕方ないような気がするしなあ…。
もちろん浮気する亮介さんも悪いけど…。
…まあ、最初から、お互いがお互いを向いていない結婚だったんよ…」
…そして、曄子は蒔子の心を代弁するかのように、言葉を選びながら続けた。
「…蒔子ちゃん、あんたが羨ましかったんやと思うわ…。
好きな人に好かれて…綺麗で、きらきら輝いているあんたが…。
…自分もそうなりたかったんやろうなあ…」
…やったことはあんまりやし、母親失格やけど、けど…不憫なひとなんや…。
その一言が紫織の胸に響いた…。