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異邦人の庭 〜secret garden〜
第13章 ミスオブ沙棗の涙 〜初恋のゆくえ〜
「…藤木…先生…。
どうして…ここに…」
声にならない声で呟く。

…男は…藤木芳人は、眩しげに眼を細めながらゆっくりと紫織に歩み寄る。

「やはり紫織だ…。
姿を見かけたときは、信じられなくて…。
…けれど、すぐに分かった…。 
見間違えるはずがない。
…君は…少しも変わってないから…」
懐かしい低音の美しい声とともに、漂うのは…

…深い深い森に咲く百合と…ひんやりとしたモッシーの薫り…。

紫織は眼を閉じた。

…今すぐ、ここから立ち去らなければ…。
そうでないと私は…
…私は…

端正な足音が、紫織の前でぴたりと止まった。

…懐かしくも忘れ得ぬ愛おしい薫りが紫織を優しく包み込む…。

抗うことは、できなかった。

紫織は震える長い睫毛を見開く。

「…藤木先生…」
眼の前にあるのは、あの美しい…何よりも愛した榛色の瞳だ。

「…逢いたかった…紫織…!」
熱い吐息混じりの…激しい情熱が込められた言葉であった。

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