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異邦人の庭 〜secret garden〜
第13章 ミスオブ沙棗の涙 〜初恋のゆくえ〜
暗くなった画面を見ながら、紫織は小さく息を吐いた。

…数日前、夜の営みで政彦を拒んでからずっと、政彦とは寝室を別にしている。
それで気不味くなったりはしてはいない。
政彦はいつもと変わらずに紫織に優しい…。
…その優しさが心苦しいのだ。

…それなのに…今、私は藤木先生に会ってしまった…。

夢のように再会してしまった…。
手の中のスマートフォンをぎゅっと握りしめ、胸に押し当てる。

…本当はこのまま、この場を立ち去るべきなのだ…。
そうでないと…
…私は…

…私は…

ぼんやり佇む紫織の視界に、藤木が映る。

…あの頃…
別れた頃と少しも変わらぬすらりとした若々しい姿と端正な目鼻立ちだ…。

変わったのは、少しだけそのやや長めの髪に白いものが混じっていることと、如何にも海外帰り然とした洗練されたデザインのジャケット…そして醸し出す雰囲気だ…。

男がゆっくりと紫織に近づく。

「…紫織…。
ご主人の電話は終わった…?」

…思わず魅入られてしまうような美しい榛色の瞳が、二十数年の時を瞬く間に越えて、紫織を見つめているのだ…。

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