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異邦人の庭 〜secret garden〜
第13章 ミスオブ沙棗の涙 〜初恋のゆくえ〜
「…本日は京都から新鮮な鱧と茄子が届きましたので、鱧と賀茂茄子のお料理にさせていただきました。
ごゆっくりどうぞ…」
女将が程よい頃合いで運んで来たのは、品の良い京懐石膳であった。
女将が去り、涼しげな硝子の皿の上の新鮮な鱧の梅酢和えを眺めながら
「鱧…久しぶりだわ」
紫織は思わず呟く。
「そういえば、紫織は学生時代は京都にいたんだよね?
大学から京都に行ったの?」
藤木の言葉に苦笑いする。
「…どこまで調べているの?私のこと…」
「インターネットで君の経歴を調べたら、京都の女子大卒となっていたから…」
…ごめんね…
と、困ったように睫毛を瞬く藤木に、優しく微笑んで見せる。
「…そうね…。
けれど、ネットだけでは分からないことがあるわ。
聖ベルナデッタはあれから退学したの。
…母があのまま、私が東京に残ることを許さなかったのよ。
先生に会いに行くことを危惧したんだと思うわ。
それて、京都に住む叔母の元に預けられて、全寮制の女子校に転入させられたの」
藤木の端正な貌が辛そうに歪んだ。
「…そうだったのか…。
すべて…僕のせいだね…。
本当に…すまなかった…」
低い苦渋に満ちた声が響いた。
「先生のせいじゃないわ…。
…すべて、運命だったのよ…」
紫織は静かに語り出す。
「…最初は、私もただ諦めの気持ちで京都に行ったわ…。
…けれど、私はあそこで少しずつ前を向くことができたの。
叔母に相当扱かれたけれど…。
勉強はもちろんのこと家事全般、礼儀作法、料理にお裁縫、茶道に華道などあらゆる教養を叩き込まれたわ。
大変だったけれど、それがあったから今の私があるんだと思うの。
…だから、先生のことは少しも恨んではいないわ」
藤木の榛色の瞳がうっすらと潤んでいた。
「…紫織…」
紫織は熱くなる胸を抑えつつ、陽気に笑った。
「…さあ、いただきましょう。
美味しそうな鱧だわ」
ごゆっくりどうぞ…」
女将が程よい頃合いで運んで来たのは、品の良い京懐石膳であった。
女将が去り、涼しげな硝子の皿の上の新鮮な鱧の梅酢和えを眺めながら
「鱧…久しぶりだわ」
紫織は思わず呟く。
「そういえば、紫織は学生時代は京都にいたんだよね?
大学から京都に行ったの?」
藤木の言葉に苦笑いする。
「…どこまで調べているの?私のこと…」
「インターネットで君の経歴を調べたら、京都の女子大卒となっていたから…」
…ごめんね…
と、困ったように睫毛を瞬く藤木に、優しく微笑んで見せる。
「…そうね…。
けれど、ネットだけでは分からないことがあるわ。
聖ベルナデッタはあれから退学したの。
…母があのまま、私が東京に残ることを許さなかったのよ。
先生に会いに行くことを危惧したんだと思うわ。
それて、京都に住む叔母の元に預けられて、全寮制の女子校に転入させられたの」
藤木の端正な貌が辛そうに歪んだ。
「…そうだったのか…。
すべて…僕のせいだね…。
本当に…すまなかった…」
低い苦渋に満ちた声が響いた。
「先生のせいじゃないわ…。
…すべて、運命だったのよ…」
紫織は静かに語り出す。
「…最初は、私もただ諦めの気持ちで京都に行ったわ…。
…けれど、私はあそこで少しずつ前を向くことができたの。
叔母に相当扱かれたけれど…。
勉強はもちろんのこと家事全般、礼儀作法、料理にお裁縫、茶道に華道などあらゆる教養を叩き込まれたわ。
大変だったけれど、それがあったから今の私があるんだと思うの。
…だから、先生のことは少しも恨んではいないわ」
藤木の榛色の瞳がうっすらと潤んでいた。
「…紫織…」
紫織は熱くなる胸を抑えつつ、陽気に笑った。
「…さあ、いただきましょう。
美味しそうな鱧だわ」