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異邦人の庭 〜secret garden〜
第13章 ミスオブ沙棗の涙 〜初恋のゆくえ〜
「…先生は…どうしていらしたの?」
遠慮勝ちに尋ねてみた。
…聞いて良いものか一瞬躊躇したが、やはり知りたい。
「うん。以前いたコロンビア大学の研究室にまた戻ることが出来てね。恩師のもと、香料の研究を続けていたよ。
お陰で、有名な化粧品会社の新しい香水のプロジェクトの主任をいくつか任されるようになった。
それが評価されてコロンビアの特別講師にも推薦してもらえたんだ。
日本の歴史的な香料について、学生に講義もすることができたよ」
「すごいわ…。
良かったわね。
先生、香料の研究を続けたいって言ってらしたものね」
…あの頃、アメリカの有名な大学から赴任してきた藤木は、学生の紫織にはとても大人で眩しく…ミステリアスに見えた。
…よれよれの白衣と、そして端正な貌立ちに不似合いな…けれど可愛げのある寝癖…。
どれもこれも、紫織の大切な思い出の中の藤木だ…。
「ありがとう。
とても充実した日々だったよ。
やっぱり僕は研究者なんだな…と実感した。
…でも、今年大きなプロジェクトも無事に成功したし、息子も日本の大学に進学することになって、帰国することにしたんだ。
…それに…妻との離婚も成立したからね…」
紫織は箸を止め、藤木を見上げた。
「…先生…」
藤木の榛色の瞳が、真っ直ぐに紫織を見つめていた。
「…うん。
…実はね…息子が高校を卒業したら離婚しようと以前から妻と話をしていたんだ…」
その言葉に、紫織は息を呑んだ。
「…どういうこと…?」
遠慮勝ちに尋ねてみた。
…聞いて良いものか一瞬躊躇したが、やはり知りたい。
「うん。以前いたコロンビア大学の研究室にまた戻ることが出来てね。恩師のもと、香料の研究を続けていたよ。
お陰で、有名な化粧品会社の新しい香水のプロジェクトの主任をいくつか任されるようになった。
それが評価されてコロンビアの特別講師にも推薦してもらえたんだ。
日本の歴史的な香料について、学生に講義もすることができたよ」
「すごいわ…。
良かったわね。
先生、香料の研究を続けたいって言ってらしたものね」
…あの頃、アメリカの有名な大学から赴任してきた藤木は、学生の紫織にはとても大人で眩しく…ミステリアスに見えた。
…よれよれの白衣と、そして端正な貌立ちに不似合いな…けれど可愛げのある寝癖…。
どれもこれも、紫織の大切な思い出の中の藤木だ…。
「ありがとう。
とても充実した日々だったよ。
やっぱり僕は研究者なんだな…と実感した。
…でも、今年大きなプロジェクトも無事に成功したし、息子も日本の大学に進学することになって、帰国することにしたんだ。
…それに…妻との離婚も成立したからね…」
紫織は箸を止め、藤木を見上げた。
「…先生…」
藤木の榛色の瞳が、真っ直ぐに紫織を見つめていた。
「…うん。
…実はね…息子が高校を卒業したら離婚しようと以前から妻と話をしていたんだ…」
その言葉に、紫織は息を呑んだ。
「…どういうこと…?」