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異邦人の庭 〜secret garden〜
第13章 ミスオブ沙棗の涙 〜初恋のゆくえ〜
寝室に入り、紫織は後ろ手に鍵を掛けた。
灯りも点けずに、暫く茫然と立ち竦む。
政彦とはあの夜以来、寝室は別だ。
…今ほど、政彦と寝室を分けていて良かったと思ったことはない。
紫織は思わず子どものように床に座り込む。
…どうしよう…。
口唇が熱い…。
震える白い指先でそっと、触れる。
やや腫れて熱を持った口唇…。
藤木に千切れるほどに吸われ、愛された証のような痛みが甘く走る。
…何てこと…してしまったのだろう…。
後悔と…それを上回る甘美な背徳の快感が、身体を支配していた。
「…先生…!」
思わず、自分の身体を掻き抱き、口走る。
…『…紫織…。愛している…。
もう、離さない…。
…君を、誰にも渡さない…』
口づけのあと、骨が砕けそうになるほど紫織を抱き竦め、藤木は熱く囁いた。
…そして…
『…明日の夜、僕が泊まっているホテルに来て欲しい…』
そう言って紫織のスマートフォンを取り上げ、自分のメールアドレスを登録し、日比谷の高級ホテルの部屋番号を送信した。
『…行けないわ…。
私…夫を裏切るのは嫌…』
紫織は大きな眼を見張り、恐ろしげに首を振った。
…あんな優しい良い人を、裏切るわけにはいかない…。
紫織の涙を唇で吸い取り、藤木が再び強く抱きしめる。
苦しげな声が、紫織の鼓膜を震わせる。
『…酷い男だね…僕は…。
君をまたこんなに苦しめて…。
けれど、これ以外に君を僕のものにする方法がないんだ』
美しい榛色の瞳が近づく。
…駄目だ…。
紫織は絶望に近い感情に襲われる。
…また、魅入られてしまうのに…。
『…ご主人を裏切ってくれ…』
紫織は少女のように泣きじゃくる。
『地獄に…堕ちるわ…』
『大丈夫だ。地獄には僕一人で行く。
唆し、引き摺り込んだのは僕だ。
僕だけの罪だ。
…君は綺麗なままだ』
藤木の美しい手が、愛おしげに紫織の髪を撫でる。
…男の言葉は、優しい優しい悪魔の囁きのようだった…。
灯りも点けずに、暫く茫然と立ち竦む。
政彦とはあの夜以来、寝室は別だ。
…今ほど、政彦と寝室を分けていて良かったと思ったことはない。
紫織は思わず子どものように床に座り込む。
…どうしよう…。
口唇が熱い…。
震える白い指先でそっと、触れる。
やや腫れて熱を持った口唇…。
藤木に千切れるほどに吸われ、愛された証のような痛みが甘く走る。
…何てこと…してしまったのだろう…。
後悔と…それを上回る甘美な背徳の快感が、身体を支配していた。
「…先生…!」
思わず、自分の身体を掻き抱き、口走る。
…『…紫織…。愛している…。
もう、離さない…。
…君を、誰にも渡さない…』
口づけのあと、骨が砕けそうになるほど紫織を抱き竦め、藤木は熱く囁いた。
…そして…
『…明日の夜、僕が泊まっているホテルに来て欲しい…』
そう言って紫織のスマートフォンを取り上げ、自分のメールアドレスを登録し、日比谷の高級ホテルの部屋番号を送信した。
『…行けないわ…。
私…夫を裏切るのは嫌…』
紫織は大きな眼を見張り、恐ろしげに首を振った。
…あんな優しい良い人を、裏切るわけにはいかない…。
紫織の涙を唇で吸い取り、藤木が再び強く抱きしめる。
苦しげな声が、紫織の鼓膜を震わせる。
『…酷い男だね…僕は…。
君をまたこんなに苦しめて…。
けれど、これ以外に君を僕のものにする方法がないんだ』
美しい榛色の瞳が近づく。
…駄目だ…。
紫織は絶望に近い感情に襲われる。
…また、魅入られてしまうのに…。
『…ご主人を裏切ってくれ…』
紫織は少女のように泣きじゃくる。
『地獄に…堕ちるわ…』
『大丈夫だ。地獄には僕一人で行く。
唆し、引き摺り込んだのは僕だ。
僕だけの罪だ。
…君は綺麗なままだ』
藤木の美しい手が、愛おしげに紫織の髪を撫でる。
…男の言葉は、優しい優しい悪魔の囁きのようだった…。