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異邦人の庭 〜secret garden〜
第13章 ミスオブ沙棗の涙 〜初恋のゆくえ〜
「いきなりこんなふうに来るなんて、何かあったんでしょ?紫織」
「…きっと美加は私を軽蔑するわ」
哀しげに呟く紫織の手を、美加は力強く握りしめた。
「そんなこと、あるわけないじゃない!
あたしたち親友でしょ?何でも話してよ」
きりりとした眉の真剣な貌で見つめられ、紫織は勇気を出して告白した。
「…私ね…、昨日…先生に会ったの…」
美加が眼を丸くする。
「え⁈先生…て、藤木先生?嘘!先生、日本に帰ってきたの?
何で?先生から連絡があったの⁈」
「偶然会ったの。私も驚いたわ。
今でも夢を見ているみたい…」
「…それで…?」
「…先生ね…離婚したんですって…」
美加が息を飲んだ。
「…離婚…」
「息子さんにも会ったわ。紗耶と同い年の息子さん…。
…先生にそっくりだったわ…。
その息子さんが日本の大学に進学するからご一緒に帰国したそう…」
…若い頃の藤木によく似た端正な青年だった。
違うのはどこか尖った眼差しと表情…。
紫織のことを良くは思っていないような印象だった…。
「…それから二人で食事をして…」
紫織の言葉が途切れる。
「…もしかして…?」
察しの良い美加が尋ねる。
「…ええ…そう…。
…愛している…て言われたわ…。
私と…一緒になりたい…と…」
…別れ際の藤木の言葉を思い返す。
狂おしく熱い口づけを交わしながら、藤木は告げた。
『君と結婚したいんだ。
これからの人生を一緒に生きてゆきたい。
僕のところに何もかも捨てて、来て欲しい。
…ご主人も、家も、何もかも…。
…愛している…紫織…』
「…それで…今夜、先生が泊まっているホテルに来て欲しい…と…」
スマートフォンに入力されたホテルの名前と部屋番号は、すっかり暗記してしまった…。
…何度も消そうとしたのに、消すことができなかった…。
「…そうだったんだ…」
美加が深い息を吐きながら呟いた。
「…それで…紫織はどうしたいの?」
「…きっと美加は私を軽蔑するわ」
哀しげに呟く紫織の手を、美加は力強く握りしめた。
「そんなこと、あるわけないじゃない!
あたしたち親友でしょ?何でも話してよ」
きりりとした眉の真剣な貌で見つめられ、紫織は勇気を出して告白した。
「…私ね…、昨日…先生に会ったの…」
美加が眼を丸くする。
「え⁈先生…て、藤木先生?嘘!先生、日本に帰ってきたの?
何で?先生から連絡があったの⁈」
「偶然会ったの。私も驚いたわ。
今でも夢を見ているみたい…」
「…それで…?」
「…先生ね…離婚したんですって…」
美加が息を飲んだ。
「…離婚…」
「息子さんにも会ったわ。紗耶と同い年の息子さん…。
…先生にそっくりだったわ…。
その息子さんが日本の大学に進学するからご一緒に帰国したそう…」
…若い頃の藤木によく似た端正な青年だった。
違うのはどこか尖った眼差しと表情…。
紫織のことを良くは思っていないような印象だった…。
「…それから二人で食事をして…」
紫織の言葉が途切れる。
「…もしかして…?」
察しの良い美加が尋ねる。
「…ええ…そう…。
…愛している…て言われたわ…。
私と…一緒になりたい…と…」
…別れ際の藤木の言葉を思い返す。
狂おしく熱い口づけを交わしながら、藤木は告げた。
『君と結婚したいんだ。
これからの人生を一緒に生きてゆきたい。
僕のところに何もかも捨てて、来て欲しい。
…ご主人も、家も、何もかも…。
…愛している…紫織…』
「…それで…今夜、先生が泊まっているホテルに来て欲しい…と…」
スマートフォンに入力されたホテルの名前と部屋番号は、すっかり暗記してしまった…。
…何度も消そうとしたのに、消すことができなかった…。
「…そうだったんだ…」
美加が深い息を吐きながら呟いた。
「…それで…紫織はどうしたいの?」