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異邦人の庭 〜secret garden〜
第13章 ミスオブ沙棗の涙 〜初恋のゆくえ〜
「奥様、今日は本当にお台所をお手伝いしなくてよろしいんですか?」
テルが不思議そうに首を傾げた。

いつも夕食の支度はテルと二人でキッチンに立つ。
紫織が教室で忙しいときにはテルがすべて作ってくれることもあるが、それは稀なことだった。
どんなに忙しくとも、一品だけでも手作りの献立を用意するように紫織は心を砕いてきた。
もちろん紗耶のためでもあったが、政彦のためでもあった。
政彦はどんなに遅くなっても必ずキッチンを覗いて
『夕食は何だったの?
あ、チキン南蛮か…。
紫織の作るチキン南蛮は美味しいんだよなあ…。
食べたかったなあ』
とにこにこと紫織に話しかけてくるのだった。

苦笑しながら
『じゃあ、少し召し上がる?お茶漬けと一緒に…』
と提案すると
『ありがとう。
明日ジムに行ってカロリーを減らしてくる。
…着替えてくるよ』
といそいそと自室に向かうのだった。
そんな政彦のために食事の支度をするのは、決して苦ではなかった。


「ええ、今日は私一人で作るわ。
テルさん、今日はもういいわよ。
暑いし早めに帰ってゆっくり休んでね」
そう声をかけ、紫織はテルを見送った。


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