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異邦人の庭 〜secret garden〜
第13章 ミスオブ沙棗の涙 〜初恋のゆくえ〜
「…どうして、あんな大切なことを…忘れていたの…」
紫織は茫然と呟いた。




…紗耶が一歳になったばかりの頃、三日三晩高熱が下がらなかったことがあった。
かかりつけ医には突発性発疹と診断され、殆どの乳児が罹る病気なので心配はないと言われたが、まだ母親になりたての紫織は不安で仕方なかった。
寝ずに看病し続けていたところに疲労から風邪を引いてしまったのだ。
折悪く、家政婦のテルも脚を捻挫して休みを取っていた。

傍らに置いたベビーベッドの中の紗耶が、今晩もくずりながら弱々しく泣き続けていた。

紫織は怠い身体を懸命に起こし、あやそうとした。
「…紗耶ちゃん…泣かないで…」

…その時、紫織の肩に温かなストールがふわりと掛けられた。

「…寝ていなさい。君もまだ熱がある。
紗耶は僕が見るから、心配しないで…」
ガウン姿の政彦が枕元に立ち、優しく囁いた。

「…そんな…貴方こそ、明日も早いのに…」
紫織は慌てた。
…政彦は新しいプロジェクトの立ち上げのリーダーとしてこの一週間、札幌、大阪、福岡と飛び回り、今日も帰宅が深夜を過ぎていた。
明日は役員達の前で大切なプレゼンもある。
ゆっくり休まなくてはならないのは政彦なのだ。

「… 大丈夫。体力には自信があるから。
一晩くらい寝られなくてもどうってことはない。
君は一日中紗耶の世話をして疲れているんだ。
具合が悪い時くらい、ぐっすり寝みなさい」

そう言って、ベビーベッドから泣き喚く紗耶を抱き上げた。

「よしよし。どうした?紗耶ちゃん…。
…どれどれ…まだお熱があるかな?」
政彦は器用に紗耶を抱き上げると、小さなおでこに自分の額を付けた。

「…熱はだいぶ下がっているよ…。
顔色もいい…。
もう大丈夫だよ…」
眼鏡の奥の瞳が優しく細められた。

「良かった…」
紫織はほっとした。
「紫織は寝ていなさい。
僕が紗耶を寝かしつけるから…」

「…ありがとう…」
紫織は素直にベッドに横になった。

横たわったまま、政彦と紗耶を見つめる。

政彦は窓辺に立ち、静かに紗耶を揺すりながら優しく話しかけた。

「…紗耶ちゃん。
ほら、見てごらん。…綺麗なお星様だよ…」
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