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異邦人の庭 〜secret garden〜
第13章 ミスオブ沙棗の涙 〜初恋のゆくえ〜
「…紫織…」
「先生もそうだと思うわ…。
先生も、私との思い出を愛しているのよ」
藤木がきっぱりと首を振る。
「そんなことはない。
僕は君そのものを愛している」
紫織の長い睫毛が瞬かれ、真っ直ぐに男を見据えた。
「…だったら…あの時、すべてを捨てて…攫ってでも私を選んで欲しかったわ」
藤木の引き締まった頰が引き攣る。
「…紫織…」
「分かっているわ。
先生は優しいひとよ。
先生はお母様を見捨てられなかった。
それは仕方のないことだわ」
…だけど…
握りしめられていた男の手を、そっと手放す。
…さながら、大切にしていた恋の形代を手放すかのように…。
静かに迷いのない声で、紫織は最後の告白をした。
「…あの時、貴方はやはり私を捨てたのよ。
そして私ではなく、お母様を選んだ。
ほかの女性と一緒になる未来を選んだ。
…先生自身で選んだのよ…。
…あの時に、私たちの恋は終わっていたんだわ…。
そのことに、もっと早く気づくべきだった。
…ううん。
…きっと、気づかない振りをしていたんだわ。
貴方との恋を手放したくなくて…」
…だから…
紫織は静かにほんの少しだけ微笑って告げた。
「さよなら。先生…。
もうお会いすることはないわ」
「先生もそうだと思うわ…。
先生も、私との思い出を愛しているのよ」
藤木がきっぱりと首を振る。
「そんなことはない。
僕は君そのものを愛している」
紫織の長い睫毛が瞬かれ、真っ直ぐに男を見据えた。
「…だったら…あの時、すべてを捨てて…攫ってでも私を選んで欲しかったわ」
藤木の引き締まった頰が引き攣る。
「…紫織…」
「分かっているわ。
先生は優しいひとよ。
先生はお母様を見捨てられなかった。
それは仕方のないことだわ」
…だけど…
握りしめられていた男の手を、そっと手放す。
…さながら、大切にしていた恋の形代を手放すかのように…。
静かに迷いのない声で、紫織は最後の告白をした。
「…あの時、貴方はやはり私を捨てたのよ。
そして私ではなく、お母様を選んだ。
ほかの女性と一緒になる未来を選んだ。
…先生自身で選んだのよ…。
…あの時に、私たちの恋は終わっていたんだわ…。
そのことに、もっと早く気づくべきだった。
…ううん。
…きっと、気づかない振りをしていたんだわ。
貴方との恋を手放したくなくて…」
…だから…
紫織は静かにほんの少しだけ微笑って告げた。
「さよなら。先生…。
もうお会いすることはないわ」