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異邦人の庭 〜secret garden〜
第13章 ミスオブ沙棗の涙 〜初恋のゆくえ〜
書斎のドアは少し開いていた。
細い光が漏れるその扉を、紫織はそっと押し開いた。
…窓辺に佇む政彦の長躯が、眼に入った。
カーテンを開け放ち、こちらに背を向けて立ち尽くすその姿は、思わず胸を突かれるほどの孤独感に満ちていた。
…私の夫は、こんな背中をしていたのか…。
紫織は初めて、政彦のまだ知らぬ一面に触れたような気がした。
気配を察知したのか、政彦がゆっくりと振り返った。
紫織を認め、驚いたように眼鏡の奥の瞳を見開き…そののち直ぐに、やや寂しげに微笑んだ。
「…お帰り…紫織。
…いや、違うか…」
そして、噛み締めるように呟いた。
「…彼のもとに行くんだね…」
「…彼…?」
驚愕に息を呑む紫織に、諦観の色に満ちた微笑みで政彦は告げたのだ。
「…藤木芳人…。
君がずっと、誰よりも愛しているひとだ」
細い光が漏れるその扉を、紫織はそっと押し開いた。
…窓辺に佇む政彦の長躯が、眼に入った。
カーテンを開け放ち、こちらに背を向けて立ち尽くすその姿は、思わず胸を突かれるほどの孤独感に満ちていた。
…私の夫は、こんな背中をしていたのか…。
紫織は初めて、政彦のまだ知らぬ一面に触れたような気がした。
気配を察知したのか、政彦がゆっくりと振り返った。
紫織を認め、驚いたように眼鏡の奥の瞳を見開き…そののち直ぐに、やや寂しげに微笑んだ。
「…お帰り…紫織。
…いや、違うか…」
そして、噛み締めるように呟いた。
「…彼のもとに行くんだね…」
「…彼…?」
驚愕に息を呑む紫織に、諦観の色に満ちた微笑みで政彦は告げたのだ。
「…藤木芳人…。
君がずっと、誰よりも愛しているひとだ」