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異邦人の庭 〜secret garden〜
第13章 ミスオブ沙棗の涙 〜初恋のゆくえ〜
「…君を初めて見た時から、僕はずっと心を奪われてきた。
今も変わらずに、君に恋している」
普段、穏やかで言葉少ななのに、紫織に対しては愛情表現を惜しみなく与えてくれるひとだった。
…そうだった…。
いつでも私を愛して、慈しんでくれていたのだ…。
そのことに私は気付こうともしなかった。

「…君が僕を愛していないことは、分かっていた。
それでも構わなかった。
君が僕と結婚してくれたのは、奇跡のような幸福だと思っていたから…」

少しも恨みがましくない政彦の言葉に、紫織の胸は潰れるように痛んだ。
「そんなこと…」

政彦は朗らかと言っても良い表情で紫織に微笑みかけた。
「…君はこんなにつまらない、なんの魅力もない男と結婚してくれて、紗耶というこの世で一番尊い可愛い娘を僕に授けてくれた。
…本当に心から感謝しているよ…。
…ありがとう…」
「貴方…。待って…」

遮ろうとする紫織に、小さく首を振る。
「いいんだ。
十八年間も僕の妻でいてくれてありがとう…。
高遠一族という荷の重い家に嫁いでくれて、重責を担ってくれて感謝しているよ。
紫織はいつもどこにいても美しくてきらきらと輝いていて、人々の注目を集めていたね…。
そんな君を見るたびに、自分の身に余る幸せを感じていたよ。
本当によく尽くしてくれた。
紗耶も良い娘に育ってくれた。
…丁度…というか千晴と婚約して、もう親としての責任は果たした。
紗耶ももう大人だ。
君がこの家を去ってもきっと理解してくれるだろう。
…だから…」

「待って…!」
思わず出た大きな声に、政彦が眼を見張った。

紫織は自分の気持ちを整理するように、ゆっくりと語り始めた。
「…たしかに…私は藤木先生が好きだったわ…。
…十七歳からずっと…。
私の初恋だったのよ…。
…そして…不意に失ってしまった恋だったの…」
「…うん…」
…優しい相槌だった。

「…今まで忘れられなかったのも本当よ。
いつまでも、あのひとの面影を追い求めていた…。
…きっと、自分の恋心を手放したくなかったんだわ…」
「…うん…」

政彦の前に歩み寄り、彼を見上げる。
「でも…今夜、先生と会っても、何故か貴方のことばかり頭に浮かんだの」

政彦の眉が不思議そうに寄せられた。
「紫織…?」
「…貴方の唄うきらきら星が…聴こえたのよ…」
その白い頰に水晶のような涙が溢れ落ちた。



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