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異邦人の庭 〜secret garden〜
第13章 ミスオブ沙棗の涙 〜初恋のゆくえ〜
「…きらきら…星…?」
政彦は不思議そうな貌をした。
「紗耶が赤ちゃんの時、子守唄に唄ってくれていたわ。
熱が出た時、ぐずって泣いていた時…。
私がいくら抱っこしても泣き止まなかったのに、貴方がきらきら星を唄ったら、あの子はすぐに泣き止んで笑い出したりして…。
…本当によく唄ってくれたのに…今までどうして忘れていたのかしら…」
…このひとの優しさを当たり前だと思っていたのだ。
なんて傲慢な私だろうか。
「…でも今夜、貴方の声が…聴こえたの…。
いつも私を…家族を大切に愛してくれていた貴方の声が…」
「…紫織…」
泣き笑いの表情で、涙を拭う。
「…私…昔を…初恋を恋しがりすぎていたの。
不意に奪われた恋だったから、自分の中で終わりにできていなかったの。
恋の欠片に必死でしがみつこうとしていたの。
…そうしないと、あの頃の私がすごく可哀想な気がして…。
だから、初恋を卒業できなかったの。
それがよくわかったわ…。
…ごめんなさい。
…私をずっと支えて、励まして、抱きしめてくれていたのは、貴方のあの歌声…そして、貴方自身だったのに…。
…私って本当にお馬鹿さんだわ…」
俯く紫織の肩を政彦が慌てて掴む。
「紫織…!
…あの…それじゃあ、君はあのひとのところには…」
紫織はきっぱりと首を振った。
「行かないわ。ちゃんとお別れを言ってきたわ。
だから、もう二度と会うことはないわ」
…それで…
と、小さな弱々しい声で紫織は尋ねた。
「…こんなこと、言えた義理ではないのだけれど、私、これからも政彦さんの奥さんでいていいかしら。
…もっとも、貴方が私を許してくれたら…の話だけれど…」
…許してはもらえないかもしれないと、紫織は自分に言い聞かせた。
結婚してから今までずっと、夫以外のひとを想い続けてきたのだ…。
…おまけに…
…その相手と、キスまでしてしまったのだ…。
政彦は不思議そうな貌をした。
「紗耶が赤ちゃんの時、子守唄に唄ってくれていたわ。
熱が出た時、ぐずって泣いていた時…。
私がいくら抱っこしても泣き止まなかったのに、貴方がきらきら星を唄ったら、あの子はすぐに泣き止んで笑い出したりして…。
…本当によく唄ってくれたのに…今までどうして忘れていたのかしら…」
…このひとの優しさを当たり前だと思っていたのだ。
なんて傲慢な私だろうか。
「…でも今夜、貴方の声が…聴こえたの…。
いつも私を…家族を大切に愛してくれていた貴方の声が…」
「…紫織…」
泣き笑いの表情で、涙を拭う。
「…私…昔を…初恋を恋しがりすぎていたの。
不意に奪われた恋だったから、自分の中で終わりにできていなかったの。
恋の欠片に必死でしがみつこうとしていたの。
…そうしないと、あの頃の私がすごく可哀想な気がして…。
だから、初恋を卒業できなかったの。
それがよくわかったわ…。
…ごめんなさい。
…私をずっと支えて、励まして、抱きしめてくれていたのは、貴方のあの歌声…そして、貴方自身だったのに…。
…私って本当にお馬鹿さんだわ…」
俯く紫織の肩を政彦が慌てて掴む。
「紫織…!
…あの…それじゃあ、君はあのひとのところには…」
紫織はきっぱりと首を振った。
「行かないわ。ちゃんとお別れを言ってきたわ。
だから、もう二度と会うことはないわ」
…それで…
と、小さな弱々しい声で紫織は尋ねた。
「…こんなこと、言えた義理ではないのだけれど、私、これからも政彦さんの奥さんでいていいかしら。
…もっとも、貴方が私を許してくれたら…の話だけれど…」
…許してはもらえないかもしれないと、紫織は自分に言い聞かせた。
結婚してから今までずっと、夫以外のひとを想い続けてきたのだ…。
…おまけに…
…その相手と、キスまでしてしまったのだ…。