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異邦人の庭 〜secret garden〜
第13章 ミスオブ沙棗の涙 〜初恋のゆくえ〜
「…ここなんだ。
秘書の今田さんが今、評判ですごく美味しいお店だって教えてくれてね」
紫織をスマートにエスコートしながら政彦が説明する。
「…素敵なお店ね…」
紫織は店内を見渡す。
元麻布のヴィーガン料理のこの店は1日1組しか予約を取らないという。
店の周囲は英国式庭園がコンパクトに美しくまとめられ、古い洋館を改築したらしいゆったりとクラシカルな雰囲気で満たされた品の良い店であった。
席に着くと訓練された黒服のギャルソンが古伊万里の杯に食前酒を注いだ。
「ヴィーガンもそうでないひとも楽しめるように良いワインも置いているらしい。
今田さんが、室長が奥様と行っても楽しめるように…と色々探してくれたんだ。
奥様は美人でおしゃれで有名なアロマテラピストだから似合う店を…と頑張ってくれてね」
紫織は微笑んだ。
「…そう。よくお礼を申し上げてね…」
…今田さんとは政彦の秘書の今田佳奈のことだ。
何度か新年の挨拶に来たことがあり、政彦の部下たちを持て成す食事会にも招いたこともある。
今どきの如何にも可愛らしい女の子だが、政彦にとても懐いているらしい雰囲気が伝わってきた。
…恐らく、今田佳奈は政彦を慕っているのだろう。
「貴方は会社で若い女性たちから人気があるのね…」
『二宮室長はモテモテなんですよ。
バレンタインデーなんか室長のデスクはチョコレートの山だし、飲み会では室長の隣はすぐに埋まるんです』
…と、部下の男性社員が雑談で教えてくれたことがある。
…やんわり伝えると、
「全然だよ。まあ、優しいお父さん…と思っているんだろうなあ。
紗耶とそう変わらない年頃のお嬢さんばかりだしね…」
のんびり謙遜するが、政彦は恐らく女性にはモテるのだと思う。
知的で優しいし、常に紳士的な振る舞いをする。
もちろんセクハラやパワハラ、モラハラの類いは考えもしないだろう。
部下がミスをしても決して叱らない。
さりげなく人目につかぬところで穏やかに諭すのみなのだそうだ。
『だから二宮室長は自然と人気があるんですよね。
皆んな、室長の為に頑張ろうって思ってます。
…それに…室長、かっこいいですもん。背は高いしジム通いもなさっててスリムだし、テニスもお上手だし。
…奥様が羨ましいです』
そう言って、今田佳奈は紫織をちらりと羨望と…やや嫉妬の混じった色の眼差しで見上げたものだ…。
秘書の今田さんが今、評判ですごく美味しいお店だって教えてくれてね」
紫織をスマートにエスコートしながら政彦が説明する。
「…素敵なお店ね…」
紫織は店内を見渡す。
元麻布のヴィーガン料理のこの店は1日1組しか予約を取らないという。
店の周囲は英国式庭園がコンパクトに美しくまとめられ、古い洋館を改築したらしいゆったりとクラシカルな雰囲気で満たされた品の良い店であった。
席に着くと訓練された黒服のギャルソンが古伊万里の杯に食前酒を注いだ。
「ヴィーガンもそうでないひとも楽しめるように良いワインも置いているらしい。
今田さんが、室長が奥様と行っても楽しめるように…と色々探してくれたんだ。
奥様は美人でおしゃれで有名なアロマテラピストだから似合う店を…と頑張ってくれてね」
紫織は微笑んだ。
「…そう。よくお礼を申し上げてね…」
…今田さんとは政彦の秘書の今田佳奈のことだ。
何度か新年の挨拶に来たことがあり、政彦の部下たちを持て成す食事会にも招いたこともある。
今どきの如何にも可愛らしい女の子だが、政彦にとても懐いているらしい雰囲気が伝わってきた。
…恐らく、今田佳奈は政彦を慕っているのだろう。
「貴方は会社で若い女性たちから人気があるのね…」
『二宮室長はモテモテなんですよ。
バレンタインデーなんか室長のデスクはチョコレートの山だし、飲み会では室長の隣はすぐに埋まるんです』
…と、部下の男性社員が雑談で教えてくれたことがある。
…やんわり伝えると、
「全然だよ。まあ、優しいお父さん…と思っているんだろうなあ。
紗耶とそう変わらない年頃のお嬢さんばかりだしね…」
のんびり謙遜するが、政彦は恐らく女性にはモテるのだと思う。
知的で優しいし、常に紳士的な振る舞いをする。
もちろんセクハラやパワハラ、モラハラの類いは考えもしないだろう。
部下がミスをしても決して叱らない。
さりげなく人目につかぬところで穏やかに諭すのみなのだそうだ。
『だから二宮室長は自然と人気があるんですよね。
皆んな、室長の為に頑張ろうって思ってます。
…それに…室長、かっこいいですもん。背は高いしジム通いもなさっててスリムだし、テニスもお上手だし。
…奥様が羨ましいです』
そう言って、今田佳奈は紫織をちらりと羨望と…やや嫉妬の混じった色の眼差しで見上げたものだ…。