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異邦人の庭 〜secret garden〜
第13章 ミスオブ沙棗の涙 〜初恋のゆくえ〜
「…あ…ああ…っ…ん…」

…今夜の政彦は、紫織が知るいつもの夫ではないようだった。
入浴後、ドレッサー前のスツールに座り、生乾きの髪を乾かしていた紫織の手を引き寄せ、彼は荒々しくダブルベッドの上に押し倒した。

真っ白なシーツの上に紫織の長く艶やかな髪が広がる。

「…紫織…愛している…」
熱く囁きながら政彦は紫織の白いネグリジェを剥ぎ取るように脱がし、そのまま熱く長い口づけを濃密に繰り返した。

「…んん…っ…あ…あぁ…ん…」
…その男の欲望を露わにした口づけと愛撫に、紫織は狼狽する。
いつもの彼は、こんなにも荒々しく直情的に紫織を求めたりしないからだ。
常に政彦は、紳士的に紫織を抱いていたのだ。

「…紫織…。
…よく見せて…君のからだを…」
ミモザ色の小さな絹の下着を脱がされ、シーツで隠そうとする紫織の手を押さえながら、政彦が囁いた。

…眼鏡を外した夫の眼差しはいつもより野性味を帯びていて、熱く沸るような光を放っていた。
その眼差しが、図らずも紫織のからだをじんわりと疼かせた。

「…いや…はずかし…い…」
紫織は羞恥のあまり身悶えた。
間接照明とはいえ、琥珀色の灯りが灯る中、からだを晒すことには大きな抵抗があった。
…もう四十歳だ。
いくら周りから若く美しいと賛美されようと、二十代の頃のような弾けるような若さは身に纏ってはいないのだ。
肌はややくすみ、からだのラインも崩れ始めているに違いない。

「…もう…若くはないのよ…。
…貴方にがっかりされたくないわ…」
それが本音だった。

政彦は愛おしくてたまらないように紫織を抱きしめた。
「…君は可愛いな…。
がっかりするわけないだろう。
…どんな君だって僕は愛しているんだから…」
紫織の髪を鋤き上げ、白い額にキスを落とす。

「…今の君のからだを見たいんだ…。
…誰のものでもない…僕だけの君を…すべて…見たいんだ…」
「…政彦さん…」

…紫織は小さく息を吐き、そろそろとシーツを外した。
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