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異邦人の庭 〜secret garden〜
第13章 ミスオブ沙棗の涙 〜初恋のゆくえ〜
「…おお…き…い…すご…く…」
涙で潤んだ瞳の先に映る政彦の貌が、甘狂おしげに歪む。

「…煽らないでくれ…紫織…。
我慢できなくなる…。
君をめちゃくちゃにしてしまいそうになる…」

「…我慢しないで…めちゃくちゃにして…あなた…」
まるで知らないひとのような夫に、無体をされたい淫靡で仄暗い欲望に突き動かされる。
…こんな気持ちは初めてだ…。

「…紫織…!」
砕けそうになるほど強く掻き抱かれ、むしゃぶりつくように口唇を奪われる。
「…んんっ…は…あ…っ…ん…!」
震える舌を肉厚で熱い舌に絡め取られ、噛み付くように吸われる。

「…ああ…っ…んん…っ…!」
そのいやらしい口づけだけでからだが敏感に反応し、淫らな蜜を滴らせる花陰を長い指に弄られ、大胆に愛撫される。

「…ああ…あな…た…も…う…」
…こんなにも早く濡れそぼる自分が恥ずかしく…それ以上にもう、淫欲を我慢することが出来なかったのだ。

「…もう…いいの…?」
耳朶に甘く囁かれ、小さく頷く。

「…紫織…」
額にキスを落とし、政彦はサイドボードの引き出しに手を伸ばした。
…そこには、避妊具が仕舞われているからだ。

…しかし、政彦の手は引き出しを開けることなく、そのまま愛おしげに紫織の髪を撫で下ろした。

「…あなた…?」
不思議そうに長い睫毛を瞬かせる紫織に、ややはにかんだように政彦は微笑んだ。

「…着けなくていいかな…?
もうひとり、子どもが欲しいんだ。
…紗耶の弟か妹が…。
…だめかな…?」
体温が一気に上がるような歓びを感じる。
…そう言えば、夫はずっと二人目を欲しがっていたのだ。
紫織も欲しかったが、紗耶の育児とアロマテラピーの仕事との両立が上手くいくか自信がなく、躊躇している内に四十になってしまったのだ…。

「…ううん…。
私も欲しいわ…。
子どもは大好き…。
…でも、もう四十よ。
赤ちゃん…出来るかしら…?」
「…努力する。
君を目一杯愛する」
真剣な表情をする政彦が愛おしくて、紫織は柔らかく微笑みながら、自分からキスをした。
…そうして、溢れ出す素直な気持ちを口にした。

「…愛しているわ。政彦さん…」

政彦の端正な瞳が、泣き出しそうに細められた。


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